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おしもど
雖然、
曳惱んで、ともすれば
向風に
押戻されさうに
成る。
暗闇は
大なる
淵の
如し。……
前途の
覺束なさ。
何うやら
九時のに
間に
合ひさうに
思はれぬ。
紙に包みて
差出しければ長庵は
押戻し
否々夫は思ひも寄ぬ事なり
豫て我が言たる通り
工面さへ出來る事なれば何であの
孝行な娘の身を
浮川竹に沈むる
周旋を我しやう他人がましき事を
せな
聊か有ても調法なは金なり心が
濟ずば其金にて
妹お富へ何なりと江戸
土産など
買て行れよ然すれば我が請たも同樣
必ず/\
心配しやるなと手にだも取ず
押戻し
肉身分たる
舍弟十兵衞を
掛て
押戻し
假令何樣なる御身分たりとも此所にて御下乘あるべし未だ
公儀より
御達し
無うちは御城代の
御門内打乘決して相成申さず
是非御下乘と
制して
止ざれば然ばとて
餘儀なく門外にて下乘し
玄關へこそは
打通りぬ