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いつしか
眞實と思ひ終に吾助の言葉の如く二兩の金を
持宿へ下りたり然るに惡事千里の
諺の如く
早晩吾助がお兼と言合せ
飯炊の宅兵衞より金五兩を
夫よりして友次郎
夫婦は
路次の
油斷なく少しも早く江戸に
到り
如何にもして身の
落付を定めんものと
炎暑の強きをも
厭はず夜を日に
繼で
行程に
早晩大井川を
取し事の
顯れんを
恐れて
逃亡せし者ならんと
店にて取々の
噂をなしければ此事
早晩宅兵衞が耳に入始て
欺かれたる事を知り
口惜さ
限りなく如何にもして
此恨みを
先づ
斯ういふ
風な
處からラクダルの
怠惰屋は
國内一般の
評判ものとなり、
人々は
何時この
漢を
仙人の
一人にして
了ひ、女は
此庄園の
傍を
通る時など
被面衣の下でコソ/\と
噂してゆく