幸福こうふく)” の例文
おたがいに達者たっしゃで、はたらくことはできるし、それに毎年まいねん気候きこうのぐあいもよくて、はたけのものもたくさんれて、こんな幸福こうふくなことはない。
自分で困った百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すなおでまじめで同情心どうじょうしんの深い新吉は、やがてこういう人たちに見まれて、幸福こうふくな生活をするようになったにちがいありません。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
けれどもまた、そんなにしてたすけてあげるよりはこのままかみ御前みまえにみんなで行く方が、ほんとうにこの方たちの幸福こうふくだとも思いました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのとき貴方あなたひとに、解悟かいごむかいなさいとか、真正しんせい幸福こうふくむかいなさいとかうことの効力こうりょくはたして、何程なにほどうことがわかりましょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かくこんな具合ぐあいで、敦子あつこさまは人妻ひとづまとなり、やがて一人ひとりおとこうまれて、すくなくとも表面うわべにはたいそう幸福こうふくらしい生活せいかつおくっていました。
昭和二十一年には博雄が小学校四年生であったはずだが、六年生を終るまで彼は楽しく学校生活をし、本人としては幸福こうふくを感じていたと思う。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
あまりよく調和ちょうわする人間にろくなやつはないけれど、そのろくでもないやつのほうが、この世の中ではたいてい幸福こうふくであるのがおかしい。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
これは結婚けつこん先立さきだつて、あたらしいいへてる、その新築しんちくむろ言葉ことばで、同時どうじに、新婚者しんこんしや幸福こうふくいの意味いみ言葉ことばなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かれには一体いったいどうしていいのかわからなかったのです。ただ、こう幸福こうふく気持きもちでいっぱいで、けれども、高慢こうまんこころなどはちりほどもおこしませんでした。
蛾次郎がじろう竹童ちくどうのいるのを知らず、ワラ小屋で幸福こうふくないびきをかいていたころに、その源氏閣の上で、しのびやかに佳人かじんふえがしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「清葉が、頬摺ほおずりしたり、額を吸ったり、……抱いて寝るそうだ。お前、女房は美しかったか、綺麗な児だって。ああ、幸福しあわせな児だ。可羨うらやましいほど幸福こうふくだ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまや子どもともわかれて、いままで持っていた猟場りょうばや、住居すまいや、かくから立ちのくように言われました。いよいよ、よその国で幸福こうふくをさがさなければなりません。
そこで王子おうじは、ラプンツェルをれて、くにかえりましたが、くに人々ひとびとは、大変たいへん歓喜よろこびで、この二人ふたりむかえました。その二人ふたりは、ながあいだむつまじく、幸福こうふくに、くらしました。
あゝてんなんとてまで無情むじやうなると、わたくし暫時しばし眞黒まつくろくもにらんで、只更ひたすらうらんだが、しかのちかんがへると、なか萬事ばんじなにわざわひとなり、なに幸福こうふくとなるか、其時そのときばかりではわからぬのである。
けれどこのでいいことをしてそのつみつぐなえば、のちにはきっと幸福こうふくむくってくる。だからだれもほとけさまをしんじて、このきているあいだたくさんいいことをしておかなければならない。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
露國ロコク政治上せいぢぜうたち世界せかい雄視ゆうしすといへどもその版圖はんと彊大きようだいにして軍備ぐんび充實じゆうじつせるだけに、民人みんじん幸福こうふくゆたかならず、貴族きぞく小民せうみんとのあいだ鐵柵てつさくもうけらるゝありて、おのづからに平等びようどう苦叫くけうする平民へいみんこゑおこ
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
デカとピンとチョンが、白茶しらちゃのフラシてん敷物しきものを敷きつめた様な枯れてかわいた芝生しばふ悠々ゆうゆうそべり、満身に日をびながら、遊んで居る。過去は知らず、将来は知らず、現在の彼等は幸福こうふくである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
高橋たかはしは、はや父親ちちおやわかれたけれど、母親ははおやがあるのでした。正吉しょうきちだけは、両親りょうしんがそろっていて、いちばん幸福こうふくうえであったのです。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
つぎの一日、新吉はからだ中がぞくぞくするほど幸福こうふくな気持ちでいました。どうしてこう幸福なのか、自分でもはっきりわけがわかりません。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
とんだことさ。』と、ミハイル、アウエリヤヌイチは聴入ききいれぬ。『ワルシャワこそきみせにゃならん、ぼくが五ねん幸福こうふく生涯しょうがいおくったところだ。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
チュンセがもしもポーセをほんとうにかあいそうにおもうなら大きな勇気ゆうきを出してすべてのいきもののほんとうの幸福こうふくをさがさなければいけない。
手紙 四 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どんな学校がよいかは議論ぎろんがあり得るけれども、正直に実状じつじょうを考えると、どうも子供のために格段の幸福こうふくがあるらしい。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
そのためにかえっていま自分じぶんとりかこんでいる幸福こうふくひとばいたのしむこと出来できるからです。御覧ごらんなさい。
「ふびんではござらんか、かような巡礼道じゅんれいどうの人の持物もちものきあげて、それがどれほどおまえたちの幸福こうふくになるものじゃない。どうか、そんな手荒てあらなことをせずに返してあげておくれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにもあれ、いま、かくこゝろ落付おちついてると、今度こんど吾等われらこの大危難だいきなんをば、おな日本人につぽんじんの——しかも忠勇ちうゆう義烈ぎれつなる帝國海軍々人ていこくかいぐんぐんじんによつてすくはれたのは、じつ吾等われら兩人りようにん幸福こうふくのみではない
けれども兄神あにがみ弟神おとうとがみ幸福こうふくをねたましくおもって、さもいまいましそうに
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それから、みんなは長いあいだたのしく、幸福こうふくにくらしました。
そして、あのばらのはなは、なにをしたって、しかられもせず、かえって幸福こうふくらされるというのは、どうしたことなんでしょうか。
はちとばらの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ジョバンニはくちびるんで、そのマジェランの星雲せいうんをのぞんで立ちました。そのいちばん幸福こうふくなそのひとのために!
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そうして貴方あなたはたとい三じゅう鉄格子てつごうしうちんでいようが、この幸福こうふくをもっているのでありますから。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして、ひすいのたまをたくさんっているものほどえらおもわれましたばかりでなく、そのひとは、幸福こうふくであるとされたのであります。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ばか、ぼくはシグナレスさんと結婚けっこんして幸福こうふくになって、それからお前にチョークのおよめさんをくれてやるよ」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
信吉しんきちは、自分じぶんっているものが、いつか学問がくもんのうえに役立やくだてば、ひとりこのひとのみのよろこびでない、人類じんるい幸福こうふくおもいましたから
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくきっとまっすぐにすすみます。きっとほんとうの幸福こうふくもとめます」ジョバンニは力強ちからづよいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「なにが、あなたの幸福こうふくになるか、また、しあわせになるかわかりません。」と、とりは、すぐにはなねがいをばききれませんでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
白鳥はくちょうになると自由じゆうそらぶことができる、白鳥はくちょうとおい、とおい、おきのかなたにある「幸福こうふくしま」へんでゆくというのであります。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
かんがぶかい、また臆病おくびょうひとたちは、たとえその準備じゅんび幾年いくねんついやされても十ぶん用意よういをしてから、とお幸福こうふくしまわたることを相談そうだんしました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「みんなは、世間せけんられるような、えらいひとになれなくともいいから、ただしい人間にんげんとなって、どうか幸福こうふくらしてもらいたい。」
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
さらばといって、あの孤独こどくなかしの幸福こうふくで、あきになるとれてしまうくさが、はたしてしあわせであるということができるだろうか?
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このちいさなむしですらが、種族全体しゅぞくぜんたい幸福こうふくのためには、自分じぶんをなんともおもわないこと、そのさまて、おどろかざるをなかったのだ。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「つばめは、幸福こうふくってきたのだ。」といって、どこのいえでも、自分じぶんいえのなかにをつくってくれるようにとのぞんだのです。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あの人間にんげんは、どうしたのだろう。」と、いもうとおもいました。自分じぶんげた幸福こうふくすなひとりこの人間にんげんにだけかからないはずはない。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうせ、わたしは、うちかえられないのだから……んでしまったほうが、かえって幸福こうふくであろう。」と、彼女かのじょおもいました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いくつも、いくつもさかなれた。なんという自分じぶん幸福こうふくなことだろう。あたまうえにはりまいたように、金色こんじきほしや、銀色ぎんしょくほしかがやいている。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
このなかには、もっとただしいことも、幸福こうふくなこともたくさんあるのですよ。わたしは、まちや、むらや、方々ほうぼうあるいてきました。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
りこうで、幸福こうふくとりとしてられているつばめらも、みなみほうかえると、こうしたおもわぬわざわいにかかることもあったのです。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「たしかにそうだよ。んでから、地下ちか二人ふたりは、永久えいきゅう幸福こうふくをもとめて、約束やくそくをはたしたんだね。」と、博士はかせこたえました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分じぶんげた幸福こうふくが、このひとたちだけゆきわたらないはずがないのに、これはいったいどうしたことだろうと判断はんだんくるしんだのであります。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
西にしくにへ、もらわれていった、二ばんめのむすめは、大事だいじにされていたので幸福こうふくでした。小父おじさんのうちは、まちでの薬屋くすりやでありました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのむらは、平和へいわむらでありましたけれど、そこにんでいる人々ひとびとは、みんな幸福こうふくうえというわけではありませんでした。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)