黒塗くろぬ)” の例文
かはいたゆみ黒塗くろぬりのえびらたか征矢そやが十七ほん、——これはみな、あのをとこつてゐたものでございませう。はい、うま仰有おつしやとほり、法師髮ほふしがみ月毛つきげでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あめも、この黒塗くろぬりの馬車ばしゃけていきました。かぜも、くろのシルクハットをかぶって燕尾服えんびふく皇子おうじせた、この馬車ばしゃまぼろしはしっていきました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それとほとんど同時に、自家用車らしい黒塗くろぬりの自動車が一台、正門をすべりこんで来るのが見えた。みんなのは、自然そのほうにひかれた。中でも次郎の眼がぎらりと光った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
校長さんが向うの黒塗くろぬりの時間表を見ながら云いました。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すると最も田舎風な、黒塗くろぬりの枕を私は一ツ手にした。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
すると、たかくろのシルクハットをかぶって、くろ燕尾服えんびふくて、黒塗くろぬりの馬車ばしゃった皇子おうじまぼろしかんで、あちらの地平線ちへいせん横切よこぎるのが、ありありとえるのでありました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
皇子おうじは、てどもてども、姫君ひめぎみえないので、はらをたてて、ひとつには心配しんぱいをして、幾人いくにんかの勇士ゆうししたがえて、みずからシルクハットをかぶり、燕尾服えんびふくて、黒塗くろぬりの馬車ばしゃ
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)