飯田いいだ)” の例文
図画の先生に頼んで東京の飯田いいだとかいううちから道具や絵の具を取り寄せてもらって、先生から借りたお手本を一生懸命に模写した。
自画像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
江州ごうしゅう、甲州、あるいは信州飯田いいだあたりの生糸商人も追い追い入り込んで来る模様があるから、なかなか油断はならないとの話もある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その家じゃはたもどんどん織るし、飯田いいだあたりから反物を売りに来れば、小姑たちにそれを買って着せもしたが、わしには一枚だって拵えてくれやしない。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
信州飯田いいだから少しはなれた上郷かみさと村の雲彩寺うんさいじの庭に、杉の大木の下からいている清水がそれで、その為にそこにいるいもりは左の眼が潰れているといいます。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ぴんからきりまで心得て穴熊あなぐま毛綱けづな手品てづまにかゝる我ならねば負くるばかりの者にはあらずと駈出かけだしして三日帰らず、四日帰らず、あるいは松本善光寺又は飯田いいだ高遠たかとおあたりの賭場とばあるき
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたしは飯田いいだ在の、某村あるむら何某なにそれがしの娘であるが、今から十三年前、ちょうど十六の七月に、近くの川へ洗濯に往っておって、のがれられない因縁から、そのまま山に入って仙人になったが
女仙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
同じ木曾で飯田いいだにぬける山街道にあららぎと呼ぶ小さな村があります。「檜木笠ひのきがさ」を編むので名がありますが、それよりこの村で面白い漆器の片口を作ります。珍らしくも口も共に一木からり出します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
秋葉あきば様への近道になります、その先は信州の飯田いいだで」
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一度は跡目相続の宗太のために飯田いいだから娵女よめじょのおまきを迎えた時。任期四年あまりにもなるが、半蔵が帰国のほどもまだ判然しない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
武蔵の比企ひき飯田いいだ石船いわぶね権現というのは、以前は船の形をした一尺五寸ばかりの石が御神体でありました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
くれた人にもよくわからない。あんまり美しいものだから横浜の異人屋敷から買って来たと言って、飯田いいだの商人が土産に置いて行ったよ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
飯田いいだの在に見つけた最後の「隠れ」まであとに見捨てて、もう一度中津川をさして帰って行こうとする人である。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もはや、東山道軍と共に率先して戦地におもむいた山吹藩やまぶきはんの諸隊は伊那の谷に帰り、北越方面に出動した高遠たかとお飯田いいだ二藩の諸隊も続々と帰国を急ぎつつあった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼はその声を京都にいる同門の人からも、名古屋にある有志からも、飯田いいだ方面の心あるものからも聞きつけた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
勝重は中のかやから、荒町の出はずれまで歩いて行って、飯田いいだ通いの塩の俵をつけた荷馬の群れに追いついた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ここを通商路とする中津川方面の商人、飯田いいだ行きの塩荷その他を積んだ馬、それらの通行にも変わりはない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
青山君——伊那にある平田門人の発起ほっきで、近く有志のものが飯田いいだに集まろうとしている。これはよい機会と思われるから、ぜひ君を誘って一緒に伊那の諸君を見に行きたい。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこまで行くと、一万七千石を領する飯田いいだ城主堀石見守ほりいわみのかみは部下に命じて市田村いちだむらの弓矢沢というところに防禦ぼうぎょ工事を施し、そこに大砲数門をえ付けたとの報知しらせも伝わって来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)