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顧見
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かへりみ
春枝夫人の
美はしき
顏は『あら。』とばつかり、
其良君を
顧見る。
私は
彼方へ!
彼方は
此方へ!
轉ぶがごとく※
『
此處が
秘密の
塲所の
入口です。』と
櫻木海軍大佐は
私を
顧見た。
此時はまだ
工事も
始まらぬと
見へ、
例の
鐵の
響も
聽えず、
中はシーンとして、
凄い
程物靜かだ。
『
兩君!
君等の
幸運を
祝します。』と
言つたまゝ、
頭を
廻らして
左右を
顧見た
時、
忽ち、
艦の
後部艦橋を
降つて、
歩調ゆたかに
吾等の
方に
歩んで
來た
一個の
海軍大佐があつた。