頑迷がんめい)” の例文
迷信、頑迷がんめい欺瞞ぎまん、偏見など、それらの悪霊は、悪霊でありながらもなお生命に執着し、その妖気ようきの中に歯と爪とを持っている。
もっとも、世の多くの頑迷がんめいな学者たちは、にわかにこの青年学徒のしめすところの結論を信用しないであろうけれど……。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
頑迷がんめいなことを言出したため、彼女がとっておいた島村氏の遺髪と一所に葬ることにして、遺骨は信州へ持ちかえられた。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それはまた、当時の、朝廷貴族から、庶民にまで、頑迷がんめいに根を張っていた迷信への一でもあったため、当時にあっては
ちょっと、日本中に類のない愚劣頑迷がんめいの御手簡、ただいまのぞいてみました。太宰! なんだ。『許す。』とは、なんだ。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼らの批評家らは、彼らが享楽主義から脱する力のないことを、理論に——もとより頑迷がんめいな理論に、仕立て上げていた。
一方に攘夷派を頑迷がんめいとののしる声があれば、一方に開港派を国賊とののしり返す声があって、そのためにどれほどの犠牲者を出したかもしれない問題である。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その疑いない証拠として、現に彼らのオクラ(魔神の正体)を見たという人があると。こうした人々の談話の中には、農民一流の頑迷がんめいさが主張づけられていた。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
江戸時代の田中丘隅という農政家が農民の頑迷がんめいな保守性を嘆じて「正法のことといへども新規のことはたやすく得心せず、其国風其他ならはしに浸みて他の流を用ひず」
土の中からの話 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
夫人のマリアは頑迷がんめいで虚栄心が強くて、芸術などには全く理解がなく、夫のハイドンをして「彼女にとって、夫が靴屋であろうと芸術家であろうと同じことだ」と嘆声たんせいもらさしめたが
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
旧弊な家風に反抗し、頑迷がんめい冷酷な義父と戦い、自由を求めて再び大学へ帰って来た、真実の友、正義潔白の王子として接吻せっぷん乾盃かんぱいの雨を浴びるでしょう。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
「そうですとも。だが、そこへ行くと、兵助殿は偉い。さすがに頑迷がんめいでない。世の中の行くところを知っている」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
患者の頑迷がんめいや偽善の度に応じて薬の中の砂糖を加減し、病人を手荒らく取扱い、瀕死ひんしの者に対して気むずかしく、彼らの顔に神を投げつけるようなことをし
それとも、スミス警部が頑迷がんめいなのであろうか。うでぐみをして考えこんでいるエバン船長は何もいわない。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところが、たえず自分の自惚うぬぼれと不満とをみしめてるその頑迷がんめいな偏狭な時勢遅れの社会は、ついに彼をいらだたせた——妻が醜くてうるさい女だっただけになおさらだった。
彼女が圏外に跳退はねのけられたのではなく、若いおり聡明そうめいであった彼女の頭が、すこし頑迷がんめいになったためではあるまいか、若いうちは皮相な芸でも突きこんでゆこうとする勇気があった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
彼は観念論者で、壮語家で、革命家で、それで内心神を信じてい、そしてヴォルテール以上に頑迷がんめいである。ヴォルテールはニードハムをあざけったが、それは誤りだ。
そのまま与えようと申しり、また、たのみとする越前も、信長の手に収められたことなど、とく、云いつかわしてみたが、浅井父子の頑迷がんめい、すこしも顧みようとはせぬ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頑迷がんめいなる彼の思想が、瞭然りょうぜんたる義務の下に痙攣的けいれんてきなうめきを発したのも、幾度であったろう。神に対する抗争。暗い汗。多くの秘密な傷、彼ひとりだけが感ずる多くの出血。
われながら頑迷がんめいには思われたが、時政は、厳父のを、振りかざさずにいられなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と云って、この真っ正直で、頑迷がんめいで、領主思いな土民を、何うしたら血を見ないで追うことができよう。長途の早駕はやに、体は綿のごとく疲れているし、わるくすれば、此方こっちが危ない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酩酊めいていによってますます高まる欲望、人を聾者ろうしゃにし愚昧ぐまいにする繁栄、ある者らにあっては苦しめる人々に背中を向けるほどの、苦痛の恐れ、頑迷がんめいな満足、魂の口をふさぐほどふくれ上がってる自我。