頑冥がんめい)” の例文
そう思って知らずらず、頑冥がんめいな人物や、仮面をかむった思想家と同じ穴に陥いっていられるのではあるまいかと、秀麿は思った。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
何故だろうか? 彼等の頭脳が古く頑冥がんめいな為であろうか。否。現代の最も進歩した詩人すらが、しばしば厳格なる韻律形式を固守している。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
鄧芝はいろいろいさめたが、この人の頑冥がんめいさを度しがたしと思ったので、大急ぎで斜谷の道へ引っ返し、これを孔明に復命した。孔明はそれを聞くと
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしはそういう保守頑冥がんめいな階級に対してはただ困ったものだと思うのみで最早どうしようという見込も考もないが
婦人と思想 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
出来るだけの方法を取って見るのが私達の責任ではありませんかと、泣き声を出して老婆の頑冥がんめいを攻撃する。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この種族は実に石から生れたというごとく、その性質が至って頑冥がんめいであることこの石のようにあるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ゆえに僕は神道しんとうの純粋なる教えを重んずると同時に、その名をかぶっていろいろなる迷信をいたり、あるいは頑冥がんめい排他的はいたてき主張をほしいままにする神道しんとうの宗派をいうのではない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
気の弱い寺田はもともと注射がきらいで、というより、注射の針の中には悪魔の毒気が吹込まれていると信じている頑冥がんめいばあさん以上に注射をおそれ、伝染病の予防注射の時など
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
しかるにわが国において歴史の尊重はだ保守頑冥がんめいの徒が功利的口実の便宜となるのみにして、一般の国民に対してはかへつて学芸の進歩と知識の開発に多大の妨害をなすに過ぎず。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
維新にまで局面をおし進めた力のうちには、むしろ頑冥がんめいな守旧思想があったのである。
ついで事件が念写にまで発展した頃は「頑冥がんめいなる学者」とされたということである。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
小栗上野介が、自身、天下を望むというような野心家でなかったことは確かとして、そうして彼はまた、幕府の保守側を代表する、頑冥がんめいなる守旧家でなかったことも確実であります。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これが日本の一つの特色で、支那の儒教的とか、印度インドの宗教的とか、いろいろ頑冥がんめいなものが日本に少なかったために、日本は古来女子を苦しめていなかったという事がわかるのである。
女子教育の目的 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
若い者の前では、つとめて、新時代への理解を示そうとしながら、しかも、その物の見方の、どうにもならない頑冥がんめいさにおいて、宛然えんぜん一個のドン・キホーテだったのは悲惨なことであった。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ドノバンはなんのためにその頑冥がんめいなほこりと愚劣ぐれつな人種差別とをすてることができないのだろう。なぜその偏狭へんきょうな胸をおしひらいて心の底からぼくらと兄弟になることができないのだろう。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
頑冥がんめいなものを啓発けいはつするのは文化事業の一つだ。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これまでの陰険醜悪な政争の上に更に一層頑冥がんめいの政争を重ねようとする志向が顕著に見えております。
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
しかるにわが国において歴史の尊重はだ保守頑冥がんめいの徒が功利的口実の便宜となるのみにして、一般の国民に対してはかへつて学芸の進歩と知識の開発に多大の妨害をなすに過ぎず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これが抑々そもそもこのたびの大乱の禍因を為したものであったが、彼は今日の窮境に陥るまでは頑冥がんめいにして悟るところ無く、更に驕慢なるこの民族主義に付加するに謬妄なる宗教的意識を以てし
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
しかるに事実上かかる頑冥がんめいにして、変通を解せざる一派の思想が力を有し、それがために当然来るべき進歩的発展的なる思想が、人為的に沮止そしされ方途に迷うて彷徨ほうこうしつつある観を呈している。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)