霊廟れいびょう)” の例文
旧字:靈廟
皇室と徳川霊廟れいびょうとを結びつけるはずの使者が、公武合体の役には立たないで、あべこべにそれをぶちこわして歩くのもあの一行だった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかるにわが東京においてはもし鬱然うつぜんたる樹木なくんばかの壮麗なる芝山内しばさんない霊廟れいびょうとても完全にその美とその威儀とを保つ事は出来まい。
彼は一日、成都郊外にある先帝の霊廟れいびょうに詣でて、大牢たいろうの祭をそなえ、涙を流して、何事か久しく祈念していた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上野東照宮霊廟れいびょうづきの同心で、町方とは全然なわ張り違いであるばかりではなく、事いやしくもこの山内において突発した以上は、吟味、詮議せんぎ、下手人の引き渡し
この壮大な霊廟れいびょうの中央に、その創建者の墓があり、その彫像がきさきの像とならんで、華麗な墓石の上に横たわり、全体は目もあやな細工をした真鍮の手摺てすりでかこんである。
霊廟れいびょうの土のおこりを落し、秘符ひふの威徳の鬼を追ふやう、立処たちどころに坊主の虫歯をいやしたはることながら、路々みちみち悪臭わるぐささの消えないばかりか、口中こうちゅうの臭気は、次第に持つ手をつたわつて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
伊達だて家三代の霊廟れいびょうのある瑞鳳殿ずいほうでんなどにお参りして戦勝の祈願をしたものだ。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
とうとう、半蔵は本殿の奥の霊廟れいびょうの前にひざまずき、かねて用意して来た自作の陳情祈祷きとうの歌をささげることができた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
泰勝院は細川家代々の霊廟れいびょうがある菩提寺で、現在はそのまま、細川家の別荘となっており、平常は門を閉じて誰にも見せないと聞いているので、観光局長のK氏もひそかに
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霊廟れいびょうの土のおこりを落し、秘符の威徳の鬼を追うよう、たちどころに坊主の虫歯をいやしたはさることながら、路々みちみち悪臭わるぐささの消えないばかりか、口中の臭気は、次第に持つ手をつたわって
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分がしきり芝山内しばさんない霊廟れいびょうを崇拝して止まないのも全くこの心に等しい。しかしレニエエは既に世界の大詩人である。彼と我と、その思想その詩才においては、いうまでもなく天地雲泥の相違があろう。
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それとて、お案じにはおよびません。きっと、華岳かがく霊廟れいびょうへ、つつがなくお納めします」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵には怪訝けげんであったが、彼の説明を口吻こうふんのままかりていうと、これなん河内かわち石川郡東条磯長しなが霊廟れいびょうに用いられてあった天平年代の古材で、年久しく荒れていた聖徳太子の御廟ごびょうの修築に
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここ華州華陰県のすぐ西の方には、天下に有名な霊廟れいびょうがある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)