鋒鋩ほうぼう)” の例文
米国は未だその鋒鋩ほうぼうを充分に現わしてはいなかったが、満州事変以来努力しつつあったその軍備は、いつ態度を強化せしむるかも計り難い。
戦争史大観 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
平生つつかくしているお延の利かない気性きしょうが、しだいに鋒鋩ほうぼうあらわして来た。おとなしい継子はそのたびに少しずつあと退さがった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが、まるで二重人格のように、それまでの彼にはけっして見られなかった、一種異様な鋒鋩ほうぼうひらめきなのであった。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
当時の沢庵は、未来の鋒鋩ほうぼうを蔵しつつ、まだ泉州堺大安寺だいあんじの文西西堂について、学徳の切磋せっさ孜々ししたる頃であった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口の重い、どっかおのれまで棄てきったようなもともとの性格が、ヒヤリとするほど鋒鋩ほうぼうをあらわしている。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
俊寛の名が漏れたのは、使者の怠慢であるといいつのった。が、基康が、その鋒鋩ほうぼうを避けて相手にしないので、今度は自分を捨てて行こうとする成経と康頼に食ってかかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一八五八年牛津オックスフォード大学に移るに及びて、その英才はいよいよ鋒鋩ほうぼうを現したが、過度の勉強の為めにいたく心身を損ね、病臥びょうが数月の後、保養のために大陸を遍歴すること約一年に及んだ。
表面に所謂いわゆる鋒鋩ほうぼうと呼ばれる堅い微小石粉が露出していて、それが墨のおり具合を容易にしていると云われているのであるが、鋒鋩の研究なども、このように物理的に行ったならば
つひ鋒鋩ほうぼうあらはきたれるよと思へば、貫一はなほ解せざるていして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
巧みに鋒鋩ほうぼうを避けて、事件のあった部屋に入るのです。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「そうそう、ウェルテル君のヴァイオリン物語を拝聴するはずだったね。さあ話し給え。もう邪魔はしないから」と迷亭君がようやく鋒鋩ほうぼうを収めると
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
紫雲石の硯が、磨墨によって平滑になってしまわないというのは、鋒鋩ほうぼうの問題に関係があると思われる。普通の物質は、磨くと表面がだんだん平滑になり、摩擦係数が減って来るはずである。
硯と墨 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
角兵衛の眼にも、小次郎の鋒鋩ほうぼうが次第に見えてきて、きのうから、少し気味わるくなった面持おももちである。愛すべき若鳥と抱いていたのが、覗いてみたら、いつの間にか懐中ふところで鷲になっていた感じである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お組はチラリと鋒鋩ほうぼうを出しました。