鉄鎚てっつい)” の例文
旧字:鐵鎚
手に持った鉄鎚てっついで打ち落し、雨晴れてこれを見るに長四尺ばかりの蛇、左右の脇に肉翅を生じてその長四、五寸ばかり、飛魚のひれのようだったと載す。
鉄鎚てっついは鉄鎚で集まり、車輪は車輪であつまり、あちこちに調べ革と木靴の模様が散らばっていて、ちょうどお尻のところに聖書が一冊描いてありました。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
ぎはぎだらけの防水したカーキ色の上衣に、泥のなかをひきずりまわしたような布目もわからないコールテンのズボンをはき、採鉱用の鉄鎚てっついを腰にさし
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
横路地から、すぐに見渡さるる、みぎわあしの中にみよしが見え、ともが隠れて、葉越葉末に、船頭の形が穂をそよがして、その船の胴に動いている。が、あの鉄鎚てっついの音を聞け。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
屠手としゅは屠獣所から雇うてきたのである。撲殺には何の用意もいらない。屠手が小さなおのに似た鉄鎚てっついをかまえて立っているところへ、牧夫が牛を引いて行くのである。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼は鉄鎚てっついで頭を一つがんとなぐられたような気もちでその手紙を握っていた。彼は一時のいたずら心から処女の一生を犠牲にしたと云う慚愧ざんきと悔恨に閉ざされていた。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それはちょうど鉄鎚てっついで鉄管の端を縦にたたくような音である。不意に自分のベットの足もとのほうでチョロ/\/\と水のわき出すような音がしばらくつづいて、またぱったりやむ。
病院の夜明けの物音 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それが一廷尉正成にがんと鉄鎚てっついをうけたようなお感じであったとしたら、正成を罰するぐらいでは、容易にお胸の解消にはならなかったであろう。——ややあっての仰せには、こうあった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ブーブーとふいごでコークスの火を燃やして、その中で真赤にした鉄を鉄床かなとこの中にはさみはさんで置いて、二人の男がトッテンカンとかわがわ鉄鎚てっついで叩いていた。叩く度にパッパッと火花が散った。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
のっけに醤油賭の敗北を言いあてられて、ガンと鉄鎚てっついを食ったように
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
マンドリンで「君が代」を奏しながらH丸の下で投げ銭を待つ伊太利イタリー人の老夫婦。ドックに響く夜業の鉄鎚てっつい。古着と安香水を売りに船へ来る無帽の女。尼さんの一行。白衣びゃくえ巴里パリーベネデクト教団。
湖をはるかに、一廓ひとくるわ、彩色した竜のうろこのごとき、湯宿々々の、壁、柱、いらかを中に隔てて、いまは鉄鎚てっついの音、謡の声も聞えないが、出崎のはたに、ぽッつりと、烏帽子えぼしの転がった形になって、あの船も
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宮の若い火鉄は、この和尚の鉄鎚てっついによっても、いよいよ