醜婦しゅうふ)” の例文
まちには、病院びょういん新院長しんいんちょういての種々いろいろうわさてられていた。下女げじょ醜婦しゅうふ会計かいけい喧嘩けんかをしたとか、会計かいけいはそのおんなまえひざって謝罪しゃざいしたとか、と。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
尾鰭おびれがして、真黒まっくろにしてしまうのなどは、せっかくの美味おいしさを台なしにしてしまうものだ。いわば絶世ぜっせいの美人を見るに忍びない醜婦しゅうふにしてしまうことで、あまりに味気ない。
鮎の食い方 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
ごくのおばあさんとかごくの醜婦しゅうふでなければ後家で居る者はまれである。もう少し売れ口のあるような女なれば必ず良人おっとを持つ。チベットでは四十あるいは五十位までは嫁入をするです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
令嬢の名前は常子つねこである。これも生憎あいにく恋愛結婚ではない。ある親戚の老人夫婦に仲人なこうどを頼んだ媒妁ばいしゃく結婚である。常子は美人と言うほどではない。もっともまた醜婦しゅうふと言うほどでもない。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
黒っぽい金紗きんしゃの衣類がネットリとまといついている。艶々つやつやと豊かな洋髪の下に、長い目、低い鼻、テラテラと光った厚い唇、と云って決して醜婦しゅうふではない。どこかしら異常な魅力のある顔だ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「身投げをした女があるとします。これは必ず美人と書きます。奥さん風の醜婦しゅうふとしたんじゃ誰も読んでくれません。水死美人ともう用語が定めてあります。死んだ人への供養にもなりますよ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
エヒミチはかえってれば自分じぶん位置いちいまはドクトル、ハバトフのわたって、病院びょういん官宅かんたくはや明渡あけわたすのをハバトフはっているというとのこと、またその下女げじょづけていた醜婦しゅうふは、このあいだから
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)