遊廓くるわ)” の例文
およそ、親と名のつく者なら、わが子が遊廓くるわへ行くなどと聞けば、それがたとい客の前であろうと、友達の前であろうと、にがり切って
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
可厭いや大袈裟おほげさあらはしたぢやねえか==陰陽界いんやうかい==なんのつて。これぢや遊廓くるわ大門おほもんに==色慾界しきよくかい==とかゝざあなるめえ。」
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
千住の遊廓くるわでは嫖客ひょうかくが、日本橋の往来では商家の手代が、下谷池之端したやいけのはたでは老人の易者が、深川木場では荷揚げ人足が、本所回向院えこういんでは僧が殺された。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
潮なりの滿ちし遊廓くるわにかろ/″\と われ投げ入れしゴム輪の車
女郎買の歌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
場所は、稲荷いなり町の遊廓くるわの裏だった。お蔦は自前芸妓じまえげいしゃとして、なかの大坂屋とか、山の春帆楼しゅんぱんろうや風月などを出先にかせいでいるのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妹の方は——来る時、そばを通りました、あの遊廓くるわ芸妓げいしゃをしていて、この土地で落籍ひかされて、可なりの商人あきんどの女房になったんでしたっけ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遊廓くるわというのも気恥ずかしいような、そんな遊廓を中心にして、煮売り屋、小茶屋がゴチャゴチャあり、江戸両国の盛り場を真似まねた、掛け小屋なども出来ており、手品、軽口、不具かたわの見世物
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
年に似あわずせかせかしている紹由と、おっとり構えこむと遊廓くるわへ行くことも忘れているような光悦と、それも変っている対照であった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いえ、彼處あすこ供待ともまちをしました、あのてあひみんな遊廓くるわのでござりますで、看板かんばんがどれも新地組合しんちくみあひしるし麗々れい/\いてござります。ねえさんたちが心着こゝろづけたでござりませう。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いや、何もむりに、訊こうたあいわねえよ。当節のお大名や旗本たちが、ただのお部屋様や妾遊びにも飽いて、遊廓くるわ通いや蔭間買いに憂身うきみ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
優しい柔かな流に面し、大橋を正面に、峰、山を右に望んで、橋添には遊廓くるわがあり、水には蠣船かきぶねもながめだけにもやってあって、しかも国道の要路だという、とおりにぎわっている。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遊廓くるわの総門前にその高札が建ててあったが、場所はただ一乗寺村とだけで、詳しくは書いてない。——日は明日あしたの夜明け方となっていた」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遊廓くるわのうちは、夜明けの一ときに、真の夜半よなかのようなひそまりが、しいんと、屋の棟に下りてくる。内蔵助は、夜具のえりを、深く被った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七軒町の遊廓くるわも、雪明りの中に、しいんと軒を並べて戸をめていた。野良犬の影が、今夜は妙に目立って見える。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぶらさげて新町の小格子こごうしをあるいていると、遊廓くるわの人気は、こぞって自分へ集まって来るように、黄いろい声が、二つの耳では聞きとれないくらい、方々からかかる。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それもせいぜい年三両か四両くらいしか貸してはくれませんので、あなた様の仰っしゃる五十両などというお金は、どうしても、遊廓くるわより他には貸してくれる所はございますまい
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三人は、遊廓くるわを一まわりして、引手茶屋の巴屋へ揚がった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遊廓くるわ中が、同じ騒ぎだった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これが遊廓くるわか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)