おお)” の例文
葉子の頭の中では、汽車が止まりきる前に仕事をしおおさねばならぬというふうに、今見たばかりの木部の姿がどんどん若やいで行った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
実は一人の女をあやめて駈落したれど露顕して追手おってがかゝり、片足くのごとく怪我をした故逃げおおせず、遂々とう/\お縄にかゝって、永い間牢に居て
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
葉子は二人ふたりの妹をかかえながらこの苦しい境遇を切り抜けて来た。それは葉子であればこそしおおせて来たようなものだった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ふん左様さようか、そう度胸がすわったらい、そうなら話すが実は己も衣を着て飛騨の高山へくと云ったは嘘だ、明日あす山三郎を欺きおおせて此の山へ引摺込んで
圖「その通りにしろ、山三郎をだますことは其の方に申し付ける、奉公初めに欺きおおせて毒酒を飲ませろ」
愛子は自分のしおおすべき務めをしおおせる事に心を集める様子で舞いつづけた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あの葛籠はいもとから預かって置いた大事の物で、盗賊に取られたのをようよう取りおおせたら又泥坊が這入って持ってきましたによって、同じお長屋の衆はかゝあいで御座りますナア
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何うかしてだまおおせて遁れようと言いくるめて居りますうちに、度々たび/\参ると、彼方むこうでも親切に致しますも惚れて居りますから、何事もお梅の云う通りに行届ゆきとゞき、亭主は窮して居りますから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何事も堪忍致すのは極く身の養生くすり、なれども堪忍の致しがたい事は女房が密夫まおとここしらえまして、亭主をだまおおせて、ほかで逢引する事が知れた時は、腹を立たぬ者は千人に一人もございません。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と落着いて手紙一本書いて、路銀を附けて遣ると、富五郎は其の手紙を持って人に知れぬ様に姿を隠し、間道かんどう/\と到頭とうとう逃げおおせて常陸へ参りました。安田一角も引続いて迯げる、花車重吉は
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
のように隠しても隠しおおせられないもので、どうしての人があのように金が出来たろう、なんだかおかしいねえ、此のごろこういう事を聞いたが、万一ひょっとしたらあんな奴が泥坊じゃアないか知らんと
といわれて伴藏最早隠しおおせる事にもいかず