追蒐おっか)” の例文
なおまたパーリー・ゾン(第一の関門)において少なくとも四、五日も抑留されますから、後から追蒐おっかけられるという一つの困難がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
若い男を突き飛ばしておいた船頭は、腰に差していた斧を無意識に抜き取って、右の手に引提ひっさげたまま、透かさずお角の後を追蒐おっかけました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人に金を借用してその催促に逢うて返すことが出来ないと云うときの心配は、あたか白刃はくじんもって後ろから追蒐おっかけられるような心地こころもちがするだろうと思います。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
皺延しわのばしの太平楽、聞くに堪えぬというは平日の事、今宵こよいはちと情実わけが有るから、お勢は顔をしかめるはさて置き、昇の顔を横眼でみながら、追蒐おっか引蒐ひっかけて高笑い。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それからもう一人、あのあでやかな御新造が追蒐おっかけて来るにきまっている、そこでまた面白い一仕事があるんでございます
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
れから又薩摩の方も陸を荒されて居ながらかえって行く船を追蒐おっかけて行くこともせず打遣うちやっておいたのみならず
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
下僕や荷物を持って居る私の旅行と違い、彼らは官命を帯び二人なり三人なり早馬で夜を日にいで追蒐おっかけましょうからどうしても六日間で追付かれる勘定です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すかさず追蒐おっかけて行って、又くわえてポンとほうる。其様そん他愛たわいもない事をして、活溌に元気よく遊ぶ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「ちぇッ、口惜しいなア、こいつらに邪魔をされて、あの駕籠を追蒐おっかけることができねえのが口惜しいなア」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あとからパタパタと追蒐おっかけて来るのは、雪江さんにきまってる。玄関で追付おっついて、何を如何どうするのだか、キャッキャッと騒ぐ。松がかなわなくなって、私の部屋の前を駈脱かけぬけて台所へ逃込む。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「だって、札附きの無宿者のあとを追蒐おっかけて、いちいち相談をするというわけにもいかなかろうじゃねえか」
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雪江さんがあとから追蒐おっかけて行って、また台所で一騒動やるうちに、ガラガラガチャンと何かがこわれる。阿母かあさんが茶の間から大きな声で叱ると、台所は急に火の消えたように闃寂ひっそりとなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
追蒐おっかけて行った人があるようだが、友さん、どうだい、ひとつその槍をかついで様子を見に出かけてくれねえか
余興も例の鬼ヶ島の征伐に至ると、もう主客ともに大童おおわらわであります。美人連を鬼に仕立てて、朝野の名流がそれを追蒐おっかけ廻って、キャッキャッという騒ぎでありました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たしかに、何者かを追蒐おっかけて出たのだが、その帰り来った時には、いつも呆然自失ぼうぜんじしつです。何物をも認めることなくして出かけ、何物をも得るところなくして帰るのです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それはこういうわけなんですよ、わっしが役割を肩に引っ掛けて、煙に追蒐おっかけられながらあのしいの大木のところまで来ますとね、そこにまた人間が一つ倒れているんです。
こっちは相手にしねえんだぞ、相手にするほどのやつらでねえからそれで相手にしねえんだぞ、俺らが逃げりゃあいい気になって追蒐おっかけて来る手前たちの馬鹿さ加減の底が知れねえや
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「こうなりゃこっちのものだ、芋虫ども、ならば手柄に追蒐おっかけてみやがれ」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あの、がんりきの百蔵という男、御苦労さまにわたしたちを附けねらってこの甲州へ追蒐おっかけて来たが、あの猿橋で、土地の親分とやらに捉まって酷い目にあったそうな、ほんとにお気の毒な話」
それからお役人が八方から出て来て俺らを追蒐おっかけやがったんだよ、よそへ逃げりゃよかったんだが、それ、君ちゃん、お前の方が心配になるだろう、それだもんだから俺らは大湊へ逃げたんだね
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それではここまで追蒐おっかけて来て刺違えたのか、ともかくも当のかたきを仕留めたものと見える。そう思っていると、またも三人の度胆を抜いたことは、その死屍の中からいびきの声が起ったことであります。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「諸君、追蒐おっかけて見給え」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)