)” の例文
優しい親切な人で、「恭やん、淋しいことおへんか、田舎へ帰りとうおすやろ、お父つあんから便たよりおすか? ろても辛抱おし。」
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
云うに云われぬ切なさらさが。たった一度に皆落ちかかるよ。残る一つの頼みの綱なら。赤い煉瓦の院長様よと。出来ぬ算段して来て見れば。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
住みめば山にのがるる心安さもあるべし。鏡のうちなる狭き宇宙の小さければとて、き事の降りかかる十字のちまたに立ちて、行きう人に気を配るらさはあらず。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世間からは私までが夜叉やしやのやうに謂はれる、私がまた其れが死ぬよりもらかツたんですけれども、これがゐてゝ見りや、貴方、豈夫まさかに別れることも出來ないじやありませんか。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
冷やかすだけならいゝが、多少は小言めく。いや味になることすらある。らかつたらうと思ふ。が、このことばかりは、彼女が、日記のなかで、しみじみ後悔の言葉として書き綴つてゐる。
妻の日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
いつか貞子と一緒の旅行の途次、ミネの郷里によって、閑子を知っている貞子が、野村の妻と閑子とをくらべ合せる自然さをミネは十分のみこみながら、何となくひけ目を感じてらかった。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
毎晩負けて土蔵へ入れられるらさに、たうとう家出をした。
石の思ひ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
医者の来たことを知ると、妻は更にらそうにあえいで訴えた。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
「何事も天命です。誰も怨む者はありません。ただ年端としはの行かぬせがれにこの上の苦労をかけるのがらさに死にます。どうぞよろしくお頼み申します」
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
毎晩負けて土蔵へ入れられるらさに、とうとう家出をした。
石の思い (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
それからのちというものフッツリとお二人のお姿が京、大阪のうちにお見えになりませぬとやら。その後の御様子を聞くすべもないこの胸のうちの苦しさらさ。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「カチューシャ可愛や別れのらさ」という同一文句の繰返しばかりで埋めた学生用ノート・ブックの数十冊——(大芸術家を以て任ずる失職活動俳優の自称「創作」)
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
無理な出世のむくいよなんどと。白い眼をされ舌さし出され。うしろ指をばさるるらさ。御門構えの估券こけんにかかわる。そこで情実、権柄けんぺいずくだの。縁故辿たどった手数をつくして。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)