車力しやりき)” の例文
周三は、いらつき氣味で、「じや、何うです。ちんころになツて馬車に乗るのと、人間になツて車力しやりきくのと何方が可いと思います。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
僕はそれ以来この男に、——この黒ぐろと日に焼けた車力しやりきに或親しみを感ずるやうになつた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
金木からまつすぐ西に三里半ばかり行き車力しやりきといふ人口五千くらゐのかなり大きい村をすぎて、すぐ到達できる海浜の小山で、そこのお稲荷さんは有名なものださうであるが
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
桟橋さんばし車力しやりき二人ふたり即死そくししてしまひ、仕事師しごとし一人ひとりちがつてしまつたとさわぎ。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
りるのを待ち兼ねて、与次郎は美禰子を西洋戸口とぐちの所へれて来た。車力しやりきおろした書物が一杯積んである。三四郎が其なかへ、向ふむきにしやがんで、しきりに何か読み始めてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
或時、たしかに夏の日の事だつたと記憶するが、家の門前で近所の子供と遊んでゐた時の事である、廣々とした空地の草の原の、うねうねと一筋長い道に埃をあげて、車力しやりきが荷馬車を曳いて來た。
貝殻追放:016 女人崇拝 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
あづけたあづからないのあらそひになつたところが、出入でいりの車力しやりき仕事師しごとし多勢おほぜいあつまつてて、此奴こいつ騙取かたりちがひないとふので、ポカ/\なぐつておもて突出つきだしたが、証拠しようこがないから表向訴おもてむきうつたへることが出来できない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)