身代金みのしろきん)” の例文
その結果が沼南のイツモ逆さに振って見せる蟇口から社を売った身代金みのしろきんの幾分を吐出はきだして目出たく無事に落着したそうだ。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
で、高尾たかを薄雲うすぐも芳野よしのなど絶世ぜつせい美人びじん身代金みのしろきんすなは人參にんじん一兩いちりやうあたひは、名高なだか遊女おいらん一人いちにん相當さうたうするのであるから、けだ容易よういなわけのものではない。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
吉原江戸町二丁目なる丁字屋半藏方へ身賣致し其身代金みのしろきんを所持致し今朝こんてう未明みめいに私し方を出立致し候を存知居ぞんぢをり候者の仕業しわざかと恐れながら存じられ候と身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もう自分は身売りした女ではない。自由な人間だということが実際に感ぜられてくる。それはキリストが私どもの払うべき身代金みのしろきんを、事実払ってくれたからなんです。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
結局ドチラも身代金みのしろきん下手へたに出ると今いう通り両方の財産を振われてしまう、財産だけならよいが、女のことから出来心、人の命にかかるようなことにならねばよいが
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぜひなく身をまかせると、次には、家に入れて家具衣装も揃えてやろうが、それにはお前という者の体に大きな資本もとでをかけることだ。身代金みのしろきん三千貫の証文を書けという。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その身代金みのしろきんとしてカザーク踊りをおどらせたり、老僕ヴォニファーチイに女の室内帽をかぶせたり、——そうかと思うと、公爵令嬢が男の帽子をかぶったり……とても一々数えきれない。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
いずれそのうちに誘拐ゆうかい者のほうから、なんらかの方法でなんとか言ってくるだろう。そうしたら、あと身代金みのしろきんの額の問題と、交換の場所方法などに関する交渉だけだ。いわば、事は取引になる。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
宿場女郎が自殺をすると、親許おやもと身代金みのしろきんをとられたり、いろいろひどい目に遇わされる。お女郎の自殺を禁止するという法律があって、ここまで人間の意志を束縛する法律は日本以外どこにもない。
平次と生きた二十七年 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「分った、早く云ってごらん。一体どれ程の身代金みのしろきんを要求するのだ」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
身代金みのしろきんはいくらだ」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
あの娘なら、何も証文を取って、身代金みのしろきんを貸したわけじゃなし、女郎になってもよいから、江戸まで連れて行ってくれろというし、容貌きりょうも踏める玉だからかかえようと約束したまでのこと。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妹の身代金みのしろきんだけを、兄妹きょうだいして稼いで抜こうとお互いになぐさめていますので、少しでも生活くらしあまりができれば妹にわたし、妹も幾らでも客にもらえば私に見せて、共々に、月に二度か三度の会う日を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)