蹴立けたて)” の例文
頼みにかゝ大膽だいたんなることを致され申さんや此所能々御推察下すゐさつくださるべしと申しければ主税之助はたゝみ蹴立けたて扨々くちかしこく云ひぬかす女めおのれより外に此手引このてびきをする者なしさるに因て汝を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
元より強弱敵しがたく、無残や肉裂け皮破れて、悲鳴のうちに息たえたる。その死骸なきがらくちくわへ、あと白雪を蹴立けたてつつ、虎はほらへと帰り行く。あとには流るる鮮血ちしおのみ、雪に紅梅の花を散らせり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
塵埃ほこり蹴立けたて喇叭らっぱの音をさせて、けたたましく通過ぎる品川通いのがた馬車もある。四丁目の角の大時計でも、縁日の夜店が出る片側の町でも、捨吉が旧い記憶につながっていないところは無かった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
賣てなりとも持參金ぢさんきんもど不縁ふえんいたすべしとのゝしりけるを長兵衞種々いろ/\いさめれども一かう承知しようちせず疊を蹴立けたて此樣なはなしは聞ずと直樣すぐさま御歸りあれとをつとしやう三郎を引立てぞ歸りける夫よりおつねは庄三郎にすこしのぜに
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)