跣足すあし)” の例文
彼女はお産をしてから二三日たたぬうちに泣きしきる赤子を抱いて、山や野原を、黒い髪を振りみだし乍ら、跣足すあしで走りまわりました。
狂女と犬 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「二夫人には、お髪をふりさばき、跣足すあしのままで、百姓どもの群れにまじり、南へ南へ、人浪にもまれながら逃れておいでになりました」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏の炎天えんてんではないからよいようなものの跣足すあしかぶがみ——まるで赤く無い金太郎きんたろうといったような風体ふうていで、急足いそぎあしって来た。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ねえ、なぜ黙っていらっしゃるの?」と、夫人は跣足すあしで、二、三歩はいって、良人の顔をわざわざのぞきに来て
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
源叔父は嘆息ためいきつきつつ小橋の上まで来しが、火影落ちしところに足跡あり。今踏みしようなり。紀州ならで誰かこの雪を跣足すあしのまま歩まんや。おきなは小走りに足跡向きしかたへとせぬ。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
やがて庄太ははうきをそこに打捨てゝ置いて、跣足すあしまゝで蔵裏の方へ見に行つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「警察焼打」といふ意外の結果をきたせしかば、市内はにわかに無警察の状態に陥り、これ見よといふ風に、態々わざわざかたぬぎて大道を濶歩するもの、自慢げに跣足すあしにて横行するもの、無提灯にて車をくものなど
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
七分間で最終の停車場ステエシヨンに下車し、香港ホンコンホテルの門前に出て支那人のく長い竹のしなこし椅子に乗つた。轎夫けうふは皆跣足すあしである。山じやうみちすべてコンクリイトで固められて居る。石を敷いた所もある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
跣足すあしくびす、洗ひきよむれ。——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
みな跣足すあしであり、みな黒き戦衣を着し、みな髪を振りさばき、また皆、片手に鋭利な真剣をげている。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)