かた)” の例文
それをかたに伊賀屋から幾らか借り出そうとして、仏事の晩にそれを厨子ずしに納めて持ち込んだのですが、ほかに大勢の人がいたので云い出すおりがなくって一旦は帰ったのです。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
精米所の主人や、浜屋の内儀かみさんなどに、家賃や、時々の小遣などの借のたまっていた壮太郎のために、双方の談合はなしあいで、そのかたに、お島の体があずけられる事になったのであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かたとは手附金、見本の意である。後に賜う栄化の契約の印として、今聖霊を賜わるのである。我らはこれを賜わりて契約の確立を信じ得、また後に賜わる者の見本を接受するのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
きゝ不審いぶかしとは思へ共にもかくにもあらそふも詮方せんかたなし勿論もちろん昨日きのふ駕籠賃かごちんはまだ受取うけとらず今日一所にもらふ筈なりしが早立しとなれば是非ぜひもなし過分くわぶんなれど此小袖は昨日の駕籠賃のかたに預りおくべしと善六は駕籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし当方にも差し迫った事情があるから、ともかくも半金で負けておく。勿論、それは半金で売り渡すのではない。つまり二百五十両のかたにそちらへあずけて置くのである。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
◯コリント後書五章はまずおわりの日における信徒の栄化(永世賦与えいぜいふよ)を述べ、次に五節において「それこの事にかなう者と我らをし給う者は神なり、聖霊みたまをそのかたとして我らに賜えり」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「博奕に勝って、そのかたに取って来たと云いました。掛地や泥だらけの羽織はすこしおかしいと思いましたけれど、羽織の泥は干して揉み落して、そのままにしまっておきました」
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
されば「かた」とは後に実行さるべき事を今かたく約する所の確証である。十七章三節のヨブのねがいは、彼の死後において神が彼の無罪を証明する約束の確証を今賜わらんことを願うのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)