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負惜
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まけを
けれどもこの山水を
贋物だと称する諸
君子は、
悉くこれを自分の
負惜しみだと盲断した。のみならず彼等の或者は「
兎に
角無名の天才は
安上りで
好いよ」
人の
噂さと
共に
彼女の
傷はだん/\その
生々しさを
失ふことが
出來たけれど、
猶幾度となくその
疼みは
復活した。
彼女は
靜かに
悔ゐることを
知つた。それでも
猶その
悔には
負惜しみがあつた。
水谷氏と
顏を
見合せて『
何も
出ないでも
好いです。
大森の
貝塚を
一鍬でも
堀つたといふ
事が、
既に
誇るに
足るのですから』など
負惜しみを
言つて
見たが、
如何もそれでは
實の
處、
滿足が
出來ぬ。