豺狼さいろう)” の例文
レヴューの名題には肉体とか絢爛けんらんとか誘惑とかいう文字が羅列され、演劇には姦淫、豺狼さいろう、貪乱といったような文字が選び出されている。
裸体談義 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
独逸ドイツはその汎独主義の手先に土耳古トルコ人をまで使役して豺狼さいろう飽く無きの大欲を遂げんと欲し、譎詐けっさ百端至らざる無かった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
そんなことでどうしますか。豺狼さいろうの野心をいだく輩が地にみちているこの時に。——どうか前王のご遺言を奉じて、国政につとめ、外には諸軍勢を
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百余年このかたは坊主一疋もいなくなり、山神形をえあるいは豺狼さいろうあるいは猨狖えんゆうとなりて行人を驚恐せしむ、故を以て、空荒くうこうげきとして僧衆なしとある。
して、長崎屋は、あの豺狼さいろうに似た根性を以て、当然、ごく最近、今度はあべこべに広海屋に噛みつくであろう。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
さん豺狼さいろう麋鹿びろくおそれ従はぬものとてなかりしかば、虎はますます猛威をたくましうして、自ら金眸きんぼう大王と名乗り、数多あまた獣類けものを眼下に見下みくだして、一山万獣ばんじゅうの君とはなりけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
歯糞を飛ばして寄附金を強請するに至っては其の名を忠孝に托すと雖も其心は豺狼さいろうひとし。泥棒もコソコソは罪軽く白刃を閃かすものは罪重し。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
木鹿王はいつも大象に乗って陣頭に立ち、立つやふしぎな法力を以て、風を起し、虎豹こひょう豺狼さいろう、毒蛇、悪蝎あっかつなどのたぐい眷族けんぞくのように従え敵陣へ進む。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燄牙えんが獅子に食われ死して活きまた食わるる事千百歳、この獅の歯の中に燄火充満し、めば焼く痛さと熱さの二苦を受くるのだ、この他豺狼さいろう地獄、銅狗
何進の催促を馬耳東風ばじとうふうに、豺狼さいろうの眼をかがやかしつつ、ひそかに、眈々たんたんと洛内の気配をうかがっているのであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「彼は、豺狼さいろうのような男だとよく人はいいます。京師へ豺狼を引入れたら人を喰いちらしはしませんかな」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂布りょふは元来、豺狼さいろうのような性質で、武勇こそ立ちまさっていますが、真実の提携はできない人物です。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蕭関の防ぎには、お味方の陳宮や臧覇ぞうはも向っていますが、多くは泰山の孫観そんかんとか呉敦ごとんなどの兵です。彼らはもともと山林の豺狼さいろう、利に遭えば、いつ寝返りを打つかも知れません。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高廉こうれんの妖法は、ただ宇宙の天色や気象に異変を呼び起すだけでなく、こつとして、炎を大地に生ぜしめ、また大洪水おおみずを捲きおこし、そうかと思うと、豺狼さいろう豼貅ひきゅう虎豹こひょうなどの猛獣群を
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四方鬱蒼うっそうに囲まれた一城郭にも等しい旧家のたたずまいを眺めただけでは、ここのあるじが、海東郡の野にひそむ二千余の豺狼さいろうを飼って、尾濃びのうの闇を股にかけて働き、戦国の裏道に出没して
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
およしなさい、呂布は天下の勇ですが、半面、豺狼さいろうのような性情を持っています。もし彼が勢力を持ち直して、兗州えんしゅうを奪りかえしたら、次には、この冀州を狙って来ないとは限りません。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李楽りがく韓暹かんせん胡才こさいの三親分は、評議一決して、山林の豺狼さいろう千余人を糾合きゅうごう
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)