さん)” の例文
小町こまちの真筆のあなめあなめの歌、孔子様のさんきんで書いてある顔回がんかいひさご耶蘇やその血が染みている十字架の切れ端などというものを買込んで
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
黒犬の絵にさんしてんだ句である。闇夜やみよに吠える黒犬は、自分が吠えているのか、闇夜の宇宙が吠えているのか、主客の認識実体が解らない。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
さん、伊の三ヵ国は、阿波を蜂須賀正勝に、讃岐さぬきを仙石権兵衛に、伊予いよを小早川隆景に、それぞれ分割してほうぜられた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絵は飄逸ひょういつをねらってやや俗になっているが、下手へたではない。それに「木まくらのかどは丸山たおやめに心ひかるるみつうちの髪」という狂歌のさんがしてある。
「コレ与一。余が絵を描いて取らする。ハハ。上手じゃろうがの……その上のさんを読んでみい」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
燈籠の絵も、さんも、大抵はその娘たちや、教え子たちの筆に成るものが多いのですから、期せずしてこれは、地蔵を中心としての共進会であり、展覧会であるようなことになります。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とつぎ来ぬかの天上の星斗せいとよりたかだか君をさんぜむために
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
孔子様のさんきんで書いてある顔回のひさご、耶蘇の血が染みてゐる十字架の切れ端などといふものを買込んで、どんなものだいと反身になるのもマンザラ悪くは有るまいかも知らぬ。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そしてしかも、蕪村をさんして芭蕉と比肩し、無批判に俳聖と称している。「詩」をその本質に持たない俳聖。そして単に、技巧や修辞に巧みであり、絵画的の描写を能事としている俳聖。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
つては、将軍の台覧にも供え、元禄年中の城主柳沢吉保やなぎさわよしやすも、垂涎すいせんかなかったといわれる——土佐光吉とさみつよしの歌仙図に近衛信尹このえのぶたださんのある——紙数にすればわずか十二、三枚の薄いじょうだった。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)