わけ)” の例文
こうして全くの遁世の生活を、人里離れた大原山の雪深い所に送る様になってからもう長い間の時が経ち、何回かの春秋を送り迎えしたわけである。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
入んが爲先妻へ無實の汚名をめいおはおひ出したるむね九郎兵衞よりの訴状面そじやうめんに見ゆるが此儀申わけありやと有に九助は全く以て右樣みぎやうの事は御座なくと委細の事故ことがら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さう叫びながら漁師たちはあわてゝ小舟を濱からおろした。わけのわからぬまゝに私も促されてそれに乘つた。二人は漕ぎ、一人はせつせと赤い小旗を振つてゐた。
樹木とその葉:03 島三題 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
そんな聲が列車の窓からした時、お葉はわけもなしに泣けて泣けて仕方がなかつた。その時は何が悲しいか解がわからないのだ。けれども涙が快よく出たのだつた。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
三十間堀さんじつけんぼりに出でて、二町ばかり来たるかどを西に折れて、有る露地口に清らなる門構かどがまへして、光沢消硝子つやけしガラス軒燈籠のきとうろうに鳥としるしたるかたに、人目にはさぞわけあるらしう二人は連立ちて入りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「どうも私には、さつぱりわけがわからんよ。」
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
打ち偖はさういふわけありしか夫にて思ひ合すればともをなされし丁稚でつちどの如何やら吾儕わしは見たやうな最前よりして考へ居りしが昨日來りし人で有しかそんなら水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いだ海老責えびぜめになる事十三度何程申わけ致し候ともすこしも御聞入なく候まゝいつそ此世の苦痛くつう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)