観念かんねん)” の例文
旧字:觀念
とあると同じく「ひと」なる観念かんねんを二つにしていることが明らかである。すなわち「人」なる字が善悪の二ように用いられている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
むろん加平がこのおそろしい過失かしつをやあ公につげるものと正九郎は観念かんねんしていた。ところが予想はまちがっていたのである。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
いよいよ駄目だめ観念かんねんしましたときに、わたくし自分じぶん日頃ひごろ一ばん大切たいせつにしていた一かさね小袖こそでを、形見かたみとして香織かおりにくれました。
卜斎ははやくも観念かんねんして、かざりをとった陣刀じんとう脇差わきざしにぶっこみ、りゅうッ——とくがはやいか、その槍襖やりぶすまの一かくへ、われから血路けつろをひらきに走った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしたちは時間じかん観念かんねんがなくなった。そこに二日いたか、六日いたか、わからなかった。意見がまちまちであった。もうだれもすくわれることを考えてはいなかった。
こうなれば宿命と思うほかはない。保吉はとうとう観念かんねんした。いや、観念したばかりではない。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それとったら、なおさらこのままかえすことじゃないから、観念かんねんおし
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しかして神道しんとうが日本民族固有こゆう観念かんねんを代表するものならば、恩誼おんぎを知るは取りもなおさず日本民族の特長であると断言してよかろうと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「水の中へはいってゆきなさい。」と老人の声が隙間げきかんをあたえずあとから追っかけてきた。若者は観念かんねんをとじて岩の上から水の上にとんだ。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ぜひなく観念かんねんした鉱山掘夫かなやまほりは、伊部熊蔵いのべくまぞう指揮しきのもとに小太郎山こたろうざんの東のふもと、木や草をわけて八方へらかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕はくれぐれも言うが、国家のために忠君愛国の観念かんねんとうとぶべきものにして、ひとり教育のみならず実業においても涵養かんようすべきものであると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そういうふうにすっかり観念かんねんしていたので、石だ、石だ、というあやまった声があがったときには、じぶんの頭上に落ちてくるはずのげんこつが、わきにそれたように
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
かれはもう観念かんねんの目をふさいでいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正九郎は観念かんねんして外に出た。曲角を三つ曲がれば自転車屋であると正九郎は思った。もうあと二つだ。もうあと一つだ。清太せいたンとこで買ってきてお母さんをごまかしたらどんなもんだろうと思った。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)