見透みえす)” の例文
が、初めの五分も見れば、それがどういうプロセスで、どうなってゆくか、ということがすぐ見透みえすく写真ばかりでは救われないと思った。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
串戯じょうだんじゃない。」と余りその見透みえすいた世辞の苦々にがにがしさに、織次は我知らず打棄うっちゃるように言った。とそのことばが激しかったか
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時も私の方から、御褒め申せば、もう何よりの御機嫌で、羽翅はがいひろげるように肩を高くなすって、御喜悦およろこびは鼻の先にも下唇にも明白ありあり見透みえすきましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だツて貴方あなた、此の雨を見掛けて、見透みえすくやうなことを有仰おつしやるんですもの。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
で、その尻上がりの「ですか」を饒舌しゃべって、時々じろじろと下目しために見越すのが、田舎漢いなかものだとあなどるなと言う態度の、それがあきらかに窓から見透みえすく。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木格子きごうしの中に硝子戸がらすどを入れた店の、仕事の道具は見透みえすいたが、弟子の前垂まえだれも見えず、主人あるじの平吉が半纏はんてんも見えぬ。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……じつは三あまり、仙境霊地せんきやうれいち心身共しんしんとも澄切すみきつて、澄切すみきつたむなさきへ凡俗ぼんぞく見透みえすくばかり。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
硝子越に彼方むこうから見透みえすくのを、主税は何かはばかって、ちょいちょい気にしては目遣いをしたようだったが、その風を見ても分る、優しい、深切らしい乳母は、いたくおしゅう盲目めしいなのに同情したために
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)