蜀山しょくさん)” の例文
露柴はすい江戸えどだった。曾祖父そうそふ蜀山しょくさん文晁ぶんちょうと交遊の厚かった人である。家も河岸かし丸清まるせいと云えば、あの界隈かいわいでは知らぬものはない。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いにしえ蜀山しょくさん一九いっくは果して如何いかなる人なりしか知らず。俳句界第一の滑稽家として世に知られたる一茶いっさは必ずまじめくさりたる人にてありしなるべし。(一月三十日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
蝶よ花よと育てた愛女まなむすめが、堕落書生のえばになる。身代をぎ込んだ出来の好い息子が、大学卒業間際に肺病で死んで了う。蜀山しょくさんがした阿房宮が楚人そびと一炬いっきょに灰になる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
蝶よ花よと育てた愛女まなむすめが、堕落書生の餌になる。身代を注ぎ込んだ出来の好い息子が、大学卒業間際に肺病で死んでしまう。蜀山しょくさんがした阿房宮あぼうきゅう楚人そびとの一炬に灰になる。
地蔵尊 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
公道を宮と鈴鹿の方面にとられてしまって、蜀山しょくさんや一九のともがらをしてすら、ふわふわの関と歌わしめたほどの荒涼たる廃道になっているから、この月夜を彷徨さまよ何人なんぴとといえども
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
確か大田蜀山しょくさんの『玉川披砂ひしゃ』という見聞録の中に、多摩川南の関戸せきど村の某氏の古文書中に、天文頃小田原北条家の出したもので、新宿興行に付き七年荒野申し付くる云々というのがある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
前夜画会がかいくずれから、京伝きょうでん蜀山しょくさん、それに燕十えんじゅうの四人で、深川仲町なかちょう松江まつえで飲んだ酒がめ切れず、二日酔の頭痛が、やたらに頭を重くするところから、おつねに附けさせた迎い酒の一本を
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
蜀山しょくさん蜀川しょくせんけんおかし、無碍むげに兵馬を進めるなどは、我から求めて国力を消耗し、魏を危うきへ押しこむようなものです。彼から来るなら仕方がありませんが、我から攻めるべきではありません。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎ上ぐる刃物ならねどうちし身の名倉のいしにかゝらぬぞなき。」わたくしは余り狂歌を喜ばぬから、解事者を以て自らおるわけではないが、これを蜀山しょくさんらの作に比するに、遜色そんしょくあるを見ない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「ははあ、初雁はつかりもとまるや恋の軽井沢、とはこれだ、この情味には蜀山しょくさんも参ったげな」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)