莫大小メリヤス)” の例文
低い軒に青い暖簾のれんがかかって、淋しい日影にさらされた硝子ガラスのなかに、莫大小メリヤスのシャツや靴足袋くつたび、エップルのような類が、手薄く並べられてあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
此時は、両軍の距離が十米で、陸軍の旧制服や、海兵服や莫大小メリヤスの股引等の服装をした薩兵が、手にとる如く見えた。
田原坂合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
埃と白墨チヨオクみた詰襟の洋服に着替へ、黒いボタンを懸けながら職員室に出て来ると、目賀田は、補布つぎだらけな莫大小メリヤスの股引の脛を火鉢にあぶりながら
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
黒の莫大小メリヤスの裏毛の付いたやつで、皺を延ばしてめた具合は少許すこし細くしまり過ぎたが、握つた心地こゝろもちは暖かであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
浦和県知事間島冬道まじまふゆみちの催した懇親会では、塩田良三りょうさん野呂松のろま狂言を演じ、優善が莫大小メリヤス襦袢じゅばん袴下はかました夜這よばい真似まねをしたことがある。間島は通称万次郎、尾張おわりの藩士である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まるで年の暮れに猶太ユダヤ人の莫大小メリヤス屋が、一ドル股引ももひきを九十九セントに「思い切り値下げ」して、「犠牲的大廉売」、「自殺か奉仕かこの英断!」なんかと楽隊入りで広告するような
答 私は家内と二階に寝て火の燃え上るのを知らずに居りましたが、隣の莫大小メリヤス屋の職人が門か垣根を打破って、私等を起して救い出して呉れたので、朝の四時か五時頃でした。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
かつそれ烟管キセル・喜世留、硝子ガラス・玻璃、莫大小メリヤス・目利安、不二山ふじさん・冨士山のたぐい一物いちぶつ字をことにし、長谷はせ愛宕あたご飛鳥あすか日下くさか不入斗いりおまず九十九つくものごとく、別に字書を作るにあらざれば知るべからず。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
(新嘉坡の土の莫大小メリヤスとうち咽ぶ。)
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あの人の家は、浅草の区役所の裏の方だそうですよ、退院したら、きっと遊びに来てくれなんてね、莫大小メリヤスの工場なんかもってかなり大きくやっているらしいんですよ。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)