しのぶ)” の例文
うかするといし手水鉢てうづばちが、やなぎかげあをいのに、きよらかな掛手拭かけてぬぐひ眞白まつしろにほのめくばかり、廊下らうかづたひの氣勢けはひはしても、人目ひとめにはたゞのきしのぶ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しのぶを仕立てる場所について、植木室うえきむろの側を折れ曲ると、そこには盆栽棚が造り並べてある。香の無い、とは言え誘惑するように美しいべんの花が盛んに咲乱れている。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かわや階段はしごを下りたところにあった。やはり石菖せきしょうはちが置いてあったり、しのぶが掛けてあったりした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
水髪やしのぶしずく、縁に風りんのチリリンと鳴る時、芸妓げいこ島田を俯向うつむけに膝に突伏つっぷした。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玄関の下駄を引抓ひッつまんで、晩方ばんがた背戸へ出て、柿のこずえの一つ星を見ながら、「あの雀はどうしたろう。」ありたけの飛石——と言っても五つばかり——をそぞろに渡ると、湿けた窪地くぼちで、すぐ上がしのぶこけ
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「実は、あの、小婢こどもを買ものに出しまして、自分でお温習さらいでもしましょうか、と存じました処が、窓の貴方、しのぶの露の、大きな雫が落ちますように、螢が一つ、飛ぶのが見えたんでございますよ……」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
写真館の二階窓で、しのぶの短冊とともにひるがえった舌はこれである。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玉のしのぶ茶室かこいった。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)