)” の例文
「お前も流浪るろうの性じゃ」と母がよく云い云いしたけれど、二十三と云うのに、ひどくけ込んで、脣などはさんで見えた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
一酌すれば明りの燭光を増したごとく周圍に清新を加へて來るが、さびた心にならうとは思はない。微醺を尊ぶこと、ペンにインキを濡らす程度。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
にぎやかながらさんだトキーオの市のはげしい輪転機の音のとなりの室で、わたくしの受持ちになる五十行の欄に
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
……この運動場の砂は絶えず吹きさぶ風のために、一尺からくぼんでしまったのです、とある教師が語ったことがある。絶えず吹き荒さぶものは風ばかりではなかった。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
慾にさび、情に溺れ、に狂する人類の中に棲息する者なり、己れの身辺に春水の優々たるを以て楽天の本義を得たりとする詩人は知らず、斉しく情を解し同じく癡に駆られ
外には沒落の嵐吹きさみて、散り行く人の忙しきに、一境げきとして聲なき墓門の靜けさ、鏘々として響くは松韵、戞々かつ/\として鳴るは聯珠、世の哀れに感じてや、鳥の歌さへいと低し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
が、その眼光にはどうもさんだところがある。彼は酒か薬品かで身体のふるえる人のような神経の傾きがちょいちょいと見える。そして家政上の問題には一度も手を染めたことはないらしい。
生涯しやうがい、その子供に逢ふ事もないだらうと思ふにつけて、富岡のさびた気持ちのなかに、その思ひ出は、郷愁きやうしうをそそつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
ところが感官がさんで来るとどこまででも限りなくあらく悪くなって行きます。まあ大抵たいていパンの本当の味などはわからなくなって非常に多くの調味料を用いたりします。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
朝の掃除がすんで、じっと鏡を見ていると、あおくむくんだ顔は、生活に疲れさんで、私はああと長い溜息ためいきをついた。壁の中にでもはいってしまいたかった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
すつかりさんだひるまになつた
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
家を売つて、家族を田舎へやつたり、女房を入院させたり、勤め口もどうやらきまつて、ひどく気持ちがさんでゐる時だつたので、おせいの誘惑に打ち勝てなかつたのだ……
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
さびし山河さんがの すべもなく
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こうして一人になって、こんなさんだカフエーの二階で手紙を書いていると、一番胸に来るのは、老いた母のことばかりである。私がどうにかなるまで死なないでいて下さい。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「外はあらしがごうごうと吹きさんでいるのにさ、君ばかりは何時までたっても変らない……不思議な人だよ。どうせ、君の事だから、いいパトロンがいるンだろうけど、女はいいな」
晩菊 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
唄つてゆきながら、ゆき子は、放蕩ほうとうの果てのやうなさんだ気持ちだつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
さんで眼のたまをぐりぐりぐりぐりと鳴らしてみたいすごんだ気持ちだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「便利は便利だけど、元村と云ふところは少しさんでますよ」
大島行 (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)