“習慣(ならい)” の例文
「チェ、残念!」と人影は、舌打つ音を響かせたが、「吾を盗人と云わば云え! 切取り強盗は戦国の習慣(ならい)! われに恥ずるところ少しもなし!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
古郷(ふるさと)の涅槃会(ねはんえ)には、膚(はだ)に抱き、袂(たもと)に捧げて、町方の娘たち、一人が三ツ二ツ手毬を携え、同じように着飾って、山寺へ来て突競(つきくら)を戯れる習慣(ならい)がある。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山村水廓(さんそんすいかく)の民(たみ)、河より海より小舟泛(う)かべて城下に用を便ずるが佐伯近在の習慣(ならい)なれば番匠川(ばんじょうがわ)の河岸(かし)にはいつも渡船(おろし)集(つど)いて乗るもの下りるもの、浦人は歌い山人はののしり
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
主人(あるじ)が先に立って奥の一室へ案内する、私も何心(なにごころ)なく其(そ)の跡について行くと、貴族の家の習慣(ならい)として、広い一室の壁に先祖代々の人々の肖像画が順序正しく懸(か)け列(つら)ねてある。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
必ず最初に「題号解釈(だいごうげしゃく)」といって、まず題号(なまえ)の解釈をする習慣(ならい)になっています。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
台所と、この上框(あがりがまち)とを隔ての板戸(いたど)に、地方(いなか)の習慣(ならい)で、蘆(あし)の簾(すだれ)の掛ったのが、破れる、断(き)れる、その上、手の届かぬ何年かの煤(すす)がたまって、相馬内裏(そうまだいり)の古御所(ふるごしょ)めく。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其の事を謂(い)ふ毎(ごと)に、姉は面(おもて)を蔽(おお)ふ習慣(ならい)、大方其(そ)の者(もの)等(ら)の身体(からだ)から姉の顔を掠(かす)めて、暖簾(のれん)を潜(くぐ)つて、部屋(ここ)まで飛込(とびこ)んで来たのであらう、……其よ、謂(い)ひやうのない厭(いや)な臭気(におい)がするから。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)