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罩
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こも
ふりがな文庫
“
罩
(
こも
)” の例文
深い霧の
罩
(
こも
)
つた中で立往生して了ふ。道が分らなくなる。谷へ落つこちるかも知れぬやうな危い処で、危い事には気附かずに狼狽する。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
皮肉らしい調子なぞは、不思議なほど
罩
(
こも
)
っていなかった。それだけまたお蓮は何と云って
好
(
よ
)
いか、
挨拶
(
あいさつ
)
のしように困るのだった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
否
(
いいや
)
、小石姫が殺されまして以来毎晩この石が泣くようになったと申します。姫の
怨念
(
おんねん
)
が石に
罩
(
こも
)
ったのでございます。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その頃から
霙
(
みぞれ
)
が降り出して烈風がまじり、ちょうど昨日と同じ天候になったが、法水は人々を遠ざけて独り鐘楼に
罩
(
こも
)
ったきりいつまでも出てこなかった。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
滋
(
うる
)
みを帯びて威のある眼、眼尻に優しい情が
罩
(
こも
)
つて、口の結びは少しく顔の締りを
弛
(
ゆる
)
めて居るけれど、──若し此人に立派な洋服を着せたら、と考へて、私は不意に
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
「誰だ!」低く、しかも力の
罩
(
こも
)
った声で叫んで、半身を起し、
四辺
(
あたり
)
をみると、白衣の怪老人が片手にメスを握り、そっと、陳君の眠っているベッドに近づいて来たのだ。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
巨
(
おお
)
きな虚無の
痙攣
(
けいれん
)
は停止したまま空間に残っていた。崩壊した物質の
堆積
(
たいせき
)
の下や、割れたコンクリートの
窪
(
くぼ
)
みには死の異臭が
罩
(
こも
)
っていた。真昼は底ぬけに明るくて悲しかった。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
しめっぽい匂いのする
幌
(
ほろ
)
の上へ、ぱらぱらと雨の注ぐ音がする。疑いもなく私の隣りには女が一人乗って居る。お
白粉
(
しろい
)
の薫りと暖かい体温が、幌の中へ蒸すように
罩
(
こも
)
っていた。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それに、昼間から夜に移ろうとする夕靄、
罩
(
こも
)
って段々高まって来る雑音、人間の引潮時の間に、この街上を眺めているのは面白かった。私はライオンの傍の電柱の下で、永い間群集を見た。
粗末な花束
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
露地のように細い
路
(
みち
)
が軒下を縦横に通じ、歩く度に、ばたんばたんとドブ板が
撥返
(
はねかえ
)
って、すえたような、一種異様な臭気が、何かしら、胸に沁みいるようにあたりに
罩
(
こも
)
っていたからであった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
濛々と湯気の
罩
(
こも
)
った
柘榴口
(
ざくろぐち
)
から、勘弁勘次が中っ腹に我鳴り返した。
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
眼尻に優しい情が
罩
(
こも
)
つて、口の結びは少しく顏の締りを弛めて居るけれど、若し此人に立派な洋服を着せたら、と考へて、私は不意に、河野廣中の寫眞を何處かで見た事を思出した。
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私は折々書見の眼をあげて、この古ぼけた仏画をふり返ると、必ず
炷
(
た
)
きもしない線香がどこかで
匀
(
にお
)
っているような心もちがした。それほど座敷の中には寺らしい閑寂の気が
罩
(
こも
)
っていた。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と芸者は
突如
(
いきなり
)
卓造君の膝を
抓
(
つね
)
った。色気抜きだから念力が
罩
(
こも
)
っている。
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
千鶴子の語気に希望が
罩
(
こも
)
っていたので、はる子は黙って頷いた。恐らく日に幾人となく、そういう女や男に会う×は、十人が九人迄にそうやって、出世祝いの護符のような文句を与えているのだろう。
沈丁花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして又ワーンと
罩
(
こも
)
った若い男女の張切った躍動する肢体が、視界一杯に飛込んで来て、ここしばらく忘れられたようなサナトリウムの生活を送っていた彼は、一瞬、その強烈な雰囲気に酔うたのか
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
陰に
罩
(
こも
)
った含み声。弥吉は力なく
地面
(
じべた
)
へ坐った。
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
杜子春の声には今までにない晴れ晴れした調子が
罩
(
こも
)
つてゐました。
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
杜子春の声には今までにない晴れ晴れした調子が
罩
(
こも
)
っていました。
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
兄の声には意外なくらい、感情の
罩
(
こも
)
った調子があった。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
罩
漢検1級
部首:⽹
13画
“罩”を含む語句
籠罩
立罩
肩罩
射籠罩
打罩
狭霧罩
罩手
肩罩板
閉罩