もつれ)” の例文
我彼に請ひていひけるは、あゝねがはくは汝のすゑつひに安息やすきをえんことを、請ふここにわが思想おもひもつれとなれるふしを解け 九四—九六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いかなるさまにや結いにけむ、手絡てがらきれも、結んだるあとのもつれもありながら、黒髪はらりと肩に乱れて、狂える獅子のたてがみした、俯伏うつぶせなのが起返る。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「畜生、若い男と若い女とで、もつれれるように巫山戯ふざけながら、船を呼ぼうとしやあがるな。誰が狗鼠くそ、遣るもんか」
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ああ無心こそたっとけれ、昔は我も何しら糸の清きばかりの一筋なりしに、果敢はかなくも嬉しいと云う事身に染初しみそめしより、やがて辛苦の結ぼれとけ濡苧ぬれおもつれの物思い、其色そのいろ嫌よと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今ではもつれを解かうにもいとぐちさへ見つからない始末ぢやありませんか。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
かくつぶやきつつ庭下駄を引掛ひきかけ、急ぎ行きて、その想へるやうに燈籠によらしめ、頬杖をつかしめ、空を眺めよと教へて、たもとしわめるをべ、すそもつれを引直し、さて好しと、すこし退きて姿勢を見るとともに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
踏躙ふみにじ気勢けはいがすると、袖のもつれ衣紋えもんの乱れ、波にゆらるゝかと震ふにつれて、あられの如く火花にて、から/\と飛ぶは、可傷いたむべし引敷ひっしかれとげを落ちて、血汐ちしおのしぶく荊の実。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我等は彼等をこのもつれの中に殘して去れり 一五一—一五三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)