さぐ)” の例文
潜んだ爆弾をさぐり続ける警官が、建物と建物との間を出入した。水道栓に縛りつけられたホースの陣列の間を、静に装甲車が通っていった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
頼朝は、口のうちで呟くように云いながら、茫然と、その眼は、二十年前の思い出をあわただしく心の奥でさぐっていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、食事が終ると、直ぐに二階へ上つて、自分のテーブルに寄つて、しきりに英和辭書の頁をめくつた。かの字をさぐり當てるまでには餘程の時間を費した。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
あの女が、自分のさぐり求めえられる世界から外へ身を隠した、もう、とてもどうしても会うことも見ることも出来ぬと思えば、自分は生きている心地ここちはせぬ。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
それが、大抵あの人が銀時計を貰ったと云うことに起因して居ると云うのをきいては、友達面をして彼の内心を或程度までさぐって居た者達に浅ましい心持を味わされる。
さぐるような眼をして言った。で耕吉はつい東京で空想していた最後の計画というのを話した。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
周は坐って手さぐりにさぐってみたが、どこへいったのかようとしてわからなかった。暫くしてから周は始めて自分が成の寝台で寝ていることに気がついた。周はおどろいていった。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
武村兵曹たけむらへいそうこしなる大鍵おほかぎさぐつて、鐵門てつもんとびらひらいた。
ひとりさぐればわびしさよ
そして、食事が終ると、すぐに二階へ上って、自分のテーブルに寄って、しきりに英和辞書のページをめくった。かの字をさぐり当てるまでにはよほどの時間を費した。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
「折角、夜光の短刀の秘密を、親子の口からさぐろうと思っていたのに、心中されちゃア玉なしだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
純粋小説の内容は、このふらつく眼の、どこを眼ざしてふらつくか、何が故にふらつくかをさぐることだ。これが純粋小説の思想であり、そうして、最高の美しきものの創造である。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ほかの生きいを、胎児たいじのように、今はさぐっている気もちであろう。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝代は母親の命令で、何氣ない風で兄の腹の中をさぐつて見た。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
勝代は母親の命令で、何気なにげない風で兄の腹の中をさぐってみた。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
榮一は柔しく訊いて弟の心の底をさぐらうとしたが
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
栄一は優しくいて弟の心の底をさぐろうとしたが
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)