)” の例文
たしかにあれは神尾喬之助で、壁辰の父娘おやこのあいだに、こんな話もあったのを聞いたのだ、という幸吉の陳辯ちんべんには耳をもさず
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この間中、船室ケビンから高い声が聞えていた。が、実を言えば、私は他の考えにすっかり気を取られていたので、それにはほとんど耳をさずにいた。
ま昼にすら男を引きよせているではないか、主殿寮とのもりょうの人びとも見るに見兼ねて、持彦にそれとなく忠言しても、そんな事に耳もさぬ若者の勢いは
花桐 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
三人の尼僧が付ききりでしきりに神を懺悔ざんげすすめる。マタ・アリはせせら笑って耳をそうともしない。それは処刑の朝、八月十一日午前五時だった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
軽慓けいひょう狠険こんけん篤信とくしん小吏しょうり大塩平八が、天保八年の饑饉に乗じ、名を湯武とうぶ放伐ほうばつり、その一味いちみひきい、火を放ちて大坂城を乗り取らんとしたるが如きは
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
香港ホンコン島を占領し、その余威をりて神国日本へ、開港を逼ろうとして虎視眈々じゃ。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人あるいは徳川幕府の顛倒てんとうを以て煩取苛求はんしゅかきゅう万民疾苦ばんみんしっくに堪えざるが故に、始めて尊王論をりて、その反抗の端をひらきたるものとなし、あたかも維新革命を以て仏国革命と同一視し
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
... らずとも、諸君方多数の手に依って討ち果たすこと出来ましょうに……」——「いやいや彼は悪人ながら剣にかけては無双の達人。それに多人数一度にかかり、討ち取ることはなりませぬ」——「それは又何故でござるかな?」——
赤格子九郎右衛門 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
加うるに葡萄牙ポルトガル西班牙スペイン人らは、その西南諸島に加うる権詐けんさ詭奪きだつの手段を以て我に向わんと欲し、しこうして内国の人心は洶々きょうきょうとして、動乱の禍機かきややもすれば宗教をりて、脚下きゃっかに破裂せんとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)