ばこ)” の例文
ホントウにこの家の案内を知っているらしく、突当りの薬戸棚の硝子ガラス戸を開いて、旧式の黒柿製の秘薬ばこを取出して調薬棚の上に置いた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いつの間に整えておいたのか、お菊ちゃんは、自分の箪笥たんすから、三人のあわせや帯や肌着などを、みだればこへ入れて、自分で風呂場へ持って行った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その隣は茶鋪、蝦蟇口がまぐち製造業、ボールばこ製造業という家並で、そのあたりが私のいた医院のあとであった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「娘の手ばこに入つて居た、たしなみの短刀で、無銘乍ら良いものでした」
挟みばこの下男と、城太郎とは、例によって、お供にいていたが、きょうの城太郎は、ゆうべの事実があるので、何となく、大蔵に対する気ぶりが違っていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
愛子さんのお宅の郵便受ばこに入れて置きます。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ただ、行燈あんどんの下に、下男の助市が、はさばこへよりかかって、孤影悄然と、よだれをたらして眠っていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おりんは鳥籠をほうり出して、奥の塗箪笥ぬりだんすから月江の帯や衣類を乱ればこにもいれずにかかえて来ました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「オオ、では……」と皆まで聞かずに、お千絵の恐怖は別なものにおどって、乱ればこの衣類をかけ、帯を結んで戸を開けなおした。そして、おずおずと竹縁に出ると
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
香染こうぞめのおん、おなじ色のみ袈裟けさ、まき絵の袈裟ばこをそばにおかれ、寝殿中央に御座あって、まんまえのひさし玉座おましに束帯低う“御拝ぎょはいノ礼”をとられた天皇のおすがたを
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし——衣桁いこうにかかっているのは、常に彼の身につけている黒の衣服と一すじの白博多で、そのほかは、床のふくであり、乱ればこであり、これと言って変った品も目にとまりません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この稿の書出しにあたって、手紙ばこを掻き探してみたのだが、見つからないので、記憶に依ったわけである。ぼくは元来、信書は一切保存しない習慣だし、日記などもつけたことがない。
と、すずりばこふたをして、絵の反古ほごがとばないように筥をのせておく。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして挟みばこかついでいる助市へ、先へ行けと手を振って見せる。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、書状ばこへ、手をのばした。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
料紙りょうしとすずりばこをこれへ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)