きん)” の例文
きんでも骨でも、神經でも靭帶じんたいでも、巧に、てばしこく摘出しまた指示して、そして適宜に必要な説明を加へる。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「どう、どう、どう」と証書を取らんとする風早が手は、きん活動はたらきを失へるやうにて幾度いくたびとらへ得ざるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その芋茎ずいきのようなきんの束をピンセットで鋏んで示しているのはトゥルプ教授で、彼は当時オランダで一流の解剖学者であり、またレンブラントの保護者でもあった。
レンブラントの国 (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
しかしすぐあとから、まあいそぐにもおよぶまいぐらゐに、自分じぶんして仕舞しまふのがつねであつた。さうして、むねきん一本いつぽんかぎかゝつたやうこゝろいだいて、らしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ようやく浮き上ったきんの力を利用して、高い方へ引くだけの精気に乏しいので、途中から断念して、再び元の位置にわが腕を落そうとすると、それがまた安くは落ちなかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして、胸のきんが一本かぎに引っ掛ったような心をいだいて、日を暮らしていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)