空惚そらとぼ)” の例文
それともわざと空惚そらとぼけてそんな嫌がらしいうのんか、「あんたも男らしいもない、済んでしもた事そないくどくどいわいでもええ」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『はゝゝゝゝ。なに目撃もくげきしましたか。はゝゝゝゝ。』とかれ空惚そらとぼけて大聲おほごえわらつた。わたくしじつはらなかから煑返にへかへつたよ。
自分は「この間の問題とは何ですか」と空惚そらとぼけたかった。けれどもそんな勇気はこの際出る余裕がなかったから、まず体裁の好い挨拶あいさつだけをしておいた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて、その事を話し出すと、それ、案の定、天井睨てんじょうにらみの上睡うわねむりで、ト先ず空惚そらとぼけて、やっと気が付いた顔色がんしょく
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母は何か空惚そらとぼけたような様子をした。「そうかい。そんな事があの人達にどうして知れたんだろうね。」
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ええ、空惚そらとぼけおるか。おぬしは拙者の腰の印籠いんろうを盗みおった。勿論油断して岩を枕に午睡ひるねしたのがこちらの不覚。併し懐中無一文の武者修業、行先々ゆくさきざきの道場荒し。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
うまく仰しやる、内々心当りがあるくせに空惚そらとぼけてゐる子。はツはツ、大分勃然むきになつて顔を赤くするナ。そんなら俺が気に入つて嬢様に周旋とりもたうといふ資格を話して聞かせやうか。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「あんたこの頃、またあの人とより戻ったんやろ、空惚そらとぼけててもちゃんと分ってる。」「ふん、そんな事ちょっとも惚けてエへん」と
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分は兄に対して、つい空惚そらとぼけた挨拶あいさつをしなければすまなくなった。すると母が今度はにがい顔をした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ははあ、あるいは煮、あるいは焼いたやつを。」と、わざと空惚そらとぼけた事を云う。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吾輩は空惚そらとぼけて
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
光子さんはわざと空惚そらとぼけて、その場アそいで済ましてしもてから、「今日友達にこないこないいわれてんけど、ほんまやろか?」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
が、それがしも狐だとすれば、私がうしろから歩いて行くのをよもや知らない筈はなかろう。知っている癖にわざと空惚そらとぼけているのだろう。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この人達は事情を知りつつ空惚そらとぼけて探りを入れているのではないかと云う警戒心から、いつも当らず触らずの答をしていたのであったが、それと云うのは
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
小憎らしいほど空惚そらとぼけたり、例の鋭い上眼を使って、まるでねらいをつけるように一直線に私を見据える。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが、塚本は、空惚そらとぼけてゐる訳ではなくて、日頃の商売の忙しさに取り紛れてしまつたのであらうか。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが、塚本は、空惚そらとぼけてゐる訳ではなくて、日頃の商売の忙しさに取り紛れてしまつたのであらうか。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが、塚本は、空惚そらとぼけている訳ではなくて、日頃の商売の忙しさに取り紛れてしまったのであろうか。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
思わずあざけるようなひとみを挙げて、二階を仰ぎると、むし空惚そらとぼけて別人を装うものの如く、女はにこりともせずに私の姿をながめて居たが、別人を装うてもあやしまれぬくらい
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私が咄嗟とっさの返辞に困って、「日記なんか附けていない」と答えると、「分ったよ」と云って変な笑い方をしたのは、「空惚そらとぼけるのは止せ」という意味だったのであろうか。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、妙子は空惚そらとぼけようとしても空惚けきれないで、ニヤニヤしながら云った。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「阿呆らしい、人が見てたらあないに空惚そらとぼけまんねんが。」
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「阿呆らしい、人が見てたらあないに空惚そらとぼけまんねんが。」
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
とうとう来たな! 私はそう思って空惚そらとぼけながら
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、庄造はちよつと空惚そらとぼけた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、庄造はちょっと空惚そらとぼけた。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
空惚そらとぼけているのらしかった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)