私語しご)” の例文
が、すぐあちらこちらに私語しごがはじまり、それが、たちまちのうちに、ごったがえすようなそうぞうしい話声となって、室じゅうに入りみだれた。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「はて?」と、怪しんだり、或いは、孔明の大仁に服して、みな戦場を捨てて洞へ帰ってしまったのではないか、などと私語しご区々まちまちであったが、孔明は
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すばやく私語しごしあいつつ、なおも障子に躍る片腕長身の士のつるぎの舞いを見つめている両人——諏訪栄三郎満腔まんこうの戦意をこめて思わず柄がしらを握りしめ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一軒いつけん煮染屋にしめやまへちて、買物かひものをして中年増ちうどしま大丸髷おほまるまげかみあまたんだる腕車くるまして、小僧こぞう三人さんにんむかうより來懸きかゝりしが、私語しごしていはく、ねえ、年明ねんあけだと。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
喃々なんなん私語しごする貴婦人達を叱咜しったして、「こんな豚共ぶたどもかせるピアノではない」とピアノのふたとざしてサッサと帰ったこともあり、普仏戦争当時、戦塵せんじんを避けたリヒノフスキー邸で
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
一人の参謀が、有馬参謀長に、私語しごした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
発矢はっしと、ばちの音、聞くものの魂をさながらに身ぶるいさせた。大絃たいげん嘈々そうそうとして急雨のように、小絃は切々として私語しごのごとしという形容ことばのままだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みんなは私語しごをやめ、湯の音をたてることさえひかえて、かれのほうに注意を集中した。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「然らば、今はならぬ。君公のお使いを帯びてのかえみち私語しごはばかる。後にいたせ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝家の苦境を救おうとするかの如く、滝川一益が側の者に急に私語しごし始めたのをきっかけに、諸所において、低語歎息が聞え出した。——これはむずかしい。織田家の御運の別れ目は今。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)