禅師ぜんじ)” の例文
旧字:禪師
それと、妻の静に、妻の母のいそ禅師ぜんじと、わずか四人を連れたきりであったと、四天王寺の僧は、後で、取調べをうけた鎌倉の武士へ語った。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、こりゃまさに禅師ぜんじに一かつを食ったが、いくら江戸でも、左腕の辻斬りがそう何人もいて、みな気をそろえて辻斬りを働こうとも考えられぬ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
むかし支唐禅師ぜんじといふ坊さんが、行脚あんぎやをして出羽の国へ往つた。そして土地ところ禅寺ぜんでら逗留とうりうしてゐるうち、その寺の後方うしろに大きな椎の木の枯木かれきがあるのを発見めつけた。
兄の禅師ぜんじだけはまれに山から京へ出た時にたずねて来るが、その人も昔風な人で、同じ僧といっても生活する能力が全然ない、脱俗したとほめて言えば言えるような男であったから
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
天台座主ざすは、この願状にはさすがに気の毒に思い、直ぐに衆徒には披露せず、十禅師ぜんじの御殿で三日間加持をした上で、始めて一同に見せた。願書の上巻に一首の歌が書かれていた。
禅師ぜんじはお年寄りで、そんな細かい仕事は難儀だらうから、お前がしてあげなさい。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
この妙音をつきだした小僧こそは、実に、後年の森田悟由ごゆう禅師ぜんじだったそうである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
余はもう一ぺん丁寧にで廻わしたのち、とうとうこれをうやうやしく禅師ぜんじに返却した。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
道元禅師ぜんじはいっております。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
その京都へはいつ着くことやら、禅師ぜんじの旅は気まかせだった。雨に降りこめられて木賃から出て来ない日、武蔵がうかがってみると、又八にきゅうをすえさせていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名高い禅師ぜんじの事だ、こんな暑さには、何か屹度アイスクリームを食べるやうな、凉しい話があるに相違ない、事に依つたら、来世で大手をふつて極楽へ通れる紹介状を書いて呉れまいものでもないと
十五、神泉殿の舞楽の日に、初めて義経におもわれた。恋を知った十六の春と共に、眉を改めて、白拍子しらびょうしの群れから去り、その細いかいなで養って来た母のいそ禅師ぜんじと一緒に、このやかたへ移った静であった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは、判官どのの愛妾あいしょうしずかどのと、その母御の禅師ぜんじです」
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禅師ぜんじではございませぬか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)