禁呪まじなひ)” の例文
「變なものがありますよ、——お勝手口に立てかけてあつたんですが、古箒ふるぼうき衣紋竹えもんだけを結へて、單衣を着せたのは、何んの禁呪まじなひでせう」
此處こゝがその、ひどなかちやうしき面白おもしろいのは、女房かみさんが、「なにかのお禁呪まじなひになるんだらう。」とつた。そこで、そのむすめが、うや/\しくおぼんせて、その釜敷かましきつてる。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「本人は山伏やまぶし崩れだと言つてはゐますがね。野伏せり見たいな野郎で、八祈祷きたう禁呪まじなひも心得てゐる上に法螺ほらと武術の達人で」
「輪飾りを引つくり返したり、障子を裏返しにすると、何かの禁呪まじなひになるでせうか。今年は流行やまひがあり相だからとか何とか」
「何でも無いよ、——身に覺えの無い者は、あれを見ても何とも思はないが、脛に傷持つ奴は、あわてゝ飛んで來る禁呪まじなひが書いてあるのさ」
「呆れたもんだ——家は借家でも、火の車には惱まされ續けでせう。こいつも火伏せの禁呪まじなひでどうかなりやしませんか」
「一方から評判の良い割に、因業いんごふ爺い扱ひをされるのはその爲で、塀外に澤庵石をブラ下げたのだつて、何んの禁呪まじなひかわかつたものぢやありません」
「何んにも書いてありませんよ、白い紙の天地紅を、結び文にしたのは何んの禁呪まじなひでせう、疱瘡除はうさうよけのお護符まもりかな」
「手前氣が弱くてそんなつまらねえ事を考へるんだ。待ちな、俺が結構な禁呪まじなひを教へてやる。今晩あの平太夫の前で、あの娘をよめにくれと言つてみるんだ」
武士の魂たる兩刀を、脅迫觀念の禁呪まじなひのせゐにしてしまつたのは、まさに八五郎の新哲學だつたのです。
すで歐羅巴ヨーロツパの——あの古い歴史を持つた國では、寶探しを專門の仕事にし、禁呪まじなひうらなひと、鶴嘴つるはしを道具にして、一生を打ち込んだ人も少なくないと言はれて居ります。
平次の常識と、長い間の經驗から見ると、地下埋藏金といふものは、實際あるかも知れませんが、祈祷きたう禁呪まじなひでそれが發見されるなどといふことは、考へられないことです。
「隣の空家の二階ですよ。店中の者が飛んで行つたが、曲者は待つては居ません。窓のところに、何の禁呪まじなひか知らないが、赤い手柄ほどの布が、ヒラヒラと下がつて居たさうで」
間拔まぬけだなア、三百六十五日、皆んな親の命日だと思へ、腹の立たない禁呪まじなひになるぜ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「靜かにしろ、そいつは皆んな借金取除けの禁呪まじなひなんだ、——今日を何時だと思ふ」
「尤もお前の髷節は俺が見ても氣になつてならねえよ。自棄やけにさう左に曲げるのは、何んの禁呪まじなひなんだ。——思ひきつてそいつを切つてしまつたら、飛んだ清々することだらう——と」
何時かは死ななければならぬ事を思ひ及んで、一番生き葬ひを出して、自分の人氣と威勢のほども見せ一つは百まで生きる禁呪まじなひにしてやらうと言つた、他愛もない事を考へる人柄でした。
女の扱帶しごきを卷いて居たが、今見ると無くなつて居るやうだ、首を縊つたのはその扱帶ぢやなくて、丈夫な細引だ、細引の上から、艶めかしい縮緬ちりめんの扱帶を卷いて居たのは、何んの禁呪まじなひかな
「お靜は自分の袢纒はんてんを持つて、横町のお藏まで飛んで行つたよ。歸りに五匁玉一つと、一升ブラ下げて來る寸法さ。虫押への禁呪まじなひは外にあるわけはねえ。日の暮れるめえに始めようぜ、八」
うらなひ、禁呪まじなひ呪文じゆもん、そんなものの外に、或種の魔法の杖を持つて歩き、それが倒れた方角と角度と、顫動せんどうとで、地下の埋藏金を見出す方法をさへ、一般に信じられた時代があつたのでした。
「胸のすく禁呪まじなひなんか知らないよ。尤も腹の減ることならうんと知つてるぜ。幸ひお天氣が良いから疊を干さうと思つてゐるんだ。氣取つてなんかゐずに、尻でも端折つて手傳つて行くがいゝ」
「へエ、梅を眺めたつて腹のくちくなる禁呪まじなひにはなりませんよ、親分」
「十八九の美しい新造が、この禁呪まじなひのお狐を買つて行かなかつたかえ」
「じよ、冗談でせう。八卦や禁呪まじなひでそんな事が手輕に判るわけはねえ」
「解つたか、八。あの女は馬鹿か豪傑か、でなければ腹の中に容易でない屈託くつたくがあるんだ。それも並大抵のことではない、女が願事が叶ふといふ禁呪まじなひのおコンコン樣を捨てゝ行くのは容易ぢやない」
蟲齒の禁呪まじなひなら、水の流れを見詰めて、ヂツとして居る筈はないし、こいつはてつきり、橋の上に人のまばらになつたところを見定めて、ドブンとやらかすに違げえねえと、肩に手を置いて、お孃さん
「ところで、玄關の上にブラ下げた瓢箪へうたんはありア何んの禁呪まじなひです」
「虫齒の禁呪まじなひか何んかだらう、お前この間頬を脹らしてゐたぜ」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「祈祷の合間をねらつて、あつしも少し禁呪まじなひをきかせましたがね」
「赤い振袖を左前に着て舌を噛み切るのは、何の禁呪まじなひなんだ」
「俺達が長尻ながつちりなんで、下女が立てた禁呪まじなひぢやないか」
「栗飯の受取なんざ、禁呪まじなひにもなるめえ」
「成程さう言へばその通りだが、——近頃なんか、そんな禁呪まじなひ流行はやるのかも知れないよ。歸りにそれとはなしに、どんな人間が住んでゐる家か訊いて見るが宜い。如才もあるまいが、その家へ飛込んで訊いちや打ちこはしだよ」
「晝行燈はなんの禁呪まじなひと解つたんだ」
「この襟卷に禁呪まじなひがあるんですよ」
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「それや何んの禁呪まじなひです。親分」
「それはどんな禁呪まじなひです、親分」
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「そいつは何んのお禁呪まじなひだ」
「でなきや、火傷やけど禁呪まじなひ
「それは何んの禁呪まじなひだ」
「妙な禁呪まじなひだな」