知恩院ちおんいん)” の例文
祇園ぎおん清水きよみず知恩院ちおんいん金閣寺きんかくじ拝見がいやなら西陣にしじんへ行って、帯か三まいがさねでも見立てるさ。どうだ、あいた口に牡丹餅ぼたもちよりうまい話だろう。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
知恩院ちおんいん勅額ちょくがくを見上げて高いものだと悟った。御飯も一人前いちにんまえは食うようになった。水底の藻は土を離れてようやく浮かび出す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
間もなく知恩院ちおんいんに着いた。本堂は見上げるほど大きなものだ。田舎から来たらしい善男善女の一団が口を開いて見上げている。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「わしもこのお首級を、知恩院ちおんいんにある光忠みつただどのへお渡し申しあげ、その後、身の始末をする所存だ。——では、さらばぞ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
院々といふのは叡山えいざん三井寺みいでらかのやうな感じがするけれど、それでは京の月といふのに当てはまらぬ。あるいは知恩院ちおんいんあたりの景色でもいふのであらうか。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
親鸞 祇園ぎおん清水きよみず知恩院ちおんいん嵐山あらしやまの紅葉ももう色づきはじめましょう。なんなら案内をさせてあげますよ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼女の父は太田垣伝右衛門光古おおたがきでんえもんてるひさと名乗る知恩院ちおんいんの寺侍で、一人むすめの彼女——名はせい——に、彦根ひこねの近藤某を婿にとって男女四児あったがみな早世してやがて婿も死んだ。
蓮月焼 (新字新仮名) / 服部之総(著)
といって話すところによると、彼らが馴染なじみはじめの時分男は二、三人の若い画家と一緒に知恩院ちおんいんの内のある寺院に間借りをして、そこで文展に出品する絵などを描いていた。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
ほとんどすべての大本山がここに集ります。浄土宗の知恩院ちおんいん百万遍ひゃくまんべん真言しんごん宗の東寺とうじ智積院ちしゃくいん、真宗の両本願寺ほんがんじ、禅宗の南禅寺なんぜんじ妙心寺みょうしんじ大徳寺だいとくじ、時宗の歓喜光寺かんきこうじ、天台宗の妙法院みょうほういん延暦寺えんりゃくじ
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
寝よげに見える東山の、まろらの姿は薄墨うすずみよりも淡く、霞の奥所にまどろんでおれば、知恩院ちおんいん聖護院しょうごいん勧修寺かんじゅじあたりの、寺々の僧侶たちも稚子ちごたちも、安らかにまどろんでいることであろう。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
知恩院ちおんいんの前の暗い夜道をひとり帰りながら色々なことを考えた。
祇園の枝垂桜 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
知恩院ちおんいん大梵鐘だいぼんしょうでもくように、気をそろえて、それへ手をかけあった両童子りょうどうじいきと力をあわすやいな
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さきに二条城の戦いで負傷し、のちに知恩院ちおんいんに入って療養していた明智光忠も、この朝
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)