眞物ほんもの)” の例文
新字:真物
「ところで、あの二人の女の何方が眞物ほんものかわかれば、自然主人を毒害した下手人もわかるだらう、——お前は何方が僞物にせものだと思ふ?」
一本も眞物ほんものと云ふものが含まれてなかつたのでせう? どうして悉くが贋物だつたのでせう? 運命でせうか? そして何故また君がそれを
奇病患者 (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
眞物ほんものぞと呼びつゝ、人々拾ひ取りて勿體なき事かな、盜人などに取られ給はゞいかにし給ふといふ。われ。貨物しろものはそれ丈なり。く我命を取り給へ。生甲斐なき身なればすこしも惜しとはおもはず。甲。
「親分——曲者は同じやうな疊紙たゝうを用意して、お杉が出た後、僞繪圖面を神棚へ供へ、大急ぎでお勇の部屋から眞物ほんものを掻つ拂つたのだね」
錢形の親分——砂利詰の千兩箱を積んだ私は、眞物ほんものの小判がない苦しさに、人前の見榮であんな事をすると思ふでせうが、飛んでもない。
一つは石崎家、一つは和泉屋、それからもう一つは玉川燕女つばめが持つてゐたよ。三つのうち一つが眞物ほんもので、あとの二つは僞物だ。
四人までがその纎手せんしゆに墨で短刀を描き添へられ、それ/″\の短刀に、赤黒い眞物ほんものの血糊がついてゐるとしたらどうでせう。
「親分、この四本のかんざしのうち、平打ひらうちの二本だけは眞物ほんものの銀だが、あとの二本は眞鍮臺しんちうだいに銀流しをかけた、飛んだ贋物いかものですぜ」
「今度は外から曲者が入つたのぢやない。何んの細工もないからお前でも判るだらう。お茂與の追善に一つ眞物ほんものの下手人を擧げて見ちやどうだ」
この中には、青銅の香爐かうろもあり、蝋銀らふぎんの置物もあり、名作のつば目貫めぬきは言ふまでもなく、ひどいのになると、眞物ほんものの小判や小粒さへも交つて居る有樣。
其處の鐵砲型に組み上げた梁の上には、眞物ほんものの鐵砲が一梃縛つてあり、その鐵砲には古簾ふるすだれなどを卷きつけて、巧みにカモフラージユしてあつたのです。
手代の榮吉に渡し、榮吉から支配人に渡すやうに仕向けた。尤も眞物ほんものの遺言状を拔いて、用箪笥には寫しの僞物にせもの
親分の平次見たいな顏をして女の先に立つて行くのを、眞物ほんものの平次はほゝ笑ましい心持で眺めて居たのです。
「御腰物方から、貞宗はもう一度戻つた筈です。旦那の出やう一つでは、私はその中味を眞物ほんものと入れ換へて、何も彼も元の通りにして上げられると思ひます」
「隱密の仕業なら藤兵衞から眞物ほんものの繪圖面を受取つた筈だ。ところが藤兵衞は外へも出ず、人にも逢はない」
尤も後でお關の方が眞物ほんものだと解つたが、宇三郎にして見れば、お玉を擔ぎ出せば、本家横領の足掛りになる
「斯う見ると、眞物ほんものと變りはないね、——もつとも、こちとらは滅多に眞物に御目にかゝることもないが——」
「その通りだよ。だがな八、同じやうな疊紙を急に手に入れて、眞物ほんものと掏り換へるなんてことは、外の者には出來ないよ。藤兵衞なら前から用意して置ける筈だ」
眞物ほんものまがふばかりの素晴らしいできで、道八の手から諸方に賣り渡され、あらゆる鑑定者の眼までくらまして、今日では日本の寳のやうに持てはやされてをるのでした。
尤も後で金座の御係にて貰ひますと、千枚のうち十二枚だけは眞物ほんものの小判だつた相で御座います。
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
千次郎とお由は福松をだまして空井戸につれ出し、其處に眞物ほんものの一萬兩の金が隱してあるとも知らず、此の中に一萬兩あるとか何とか出鱈目でたらめを言つて福松を殺したのさ。
自分からもガラツ八を説いて、『いざ三々九度の杯といふ時、眞物ほんものの聟の錦太郎と入れ替はらせるから』といふ條件で、やうやく聟入の僞首にせくびになることを承知させたのでした。
眞物ほんものの五萬五千兩の隱し場所は、どんなに謎をかけたところで、主人の徳右衞門は打ち明けてくれさうもなく、さうかと言つて元日に庭をかせようとした手代の米松や
贋物の中に眞物ほんものの小判三十二枚入れてあつたのは、萬一の用意に、上側に並べて置いたので、この細工が、反つて平次に取つては、解決への最初のヒントでもありました。
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
しましたが、聽いちやくれなかつた。あの通り一てつだからね。——割つたのは誰の仕業かわからないが、あれが若し眞物ほんものなら一つ/\が國の寶だ。よくない事だと思ふんだよ
「お關と言ふのかな、あの娘は。先刻まで私は眞物ほんものの濱路だなんて言ひ張つて居たが——もつともそんな天一坊氣取りさへなければ、飛んだ良い娘だ。下町育ちで解りが早いから」
まして、その僞物は、眞物ほんものとは似も付かぬ粗末な品で、誰が見ても一目でそれとわかります
「あつしの眞物ほんものの髷はたぼの中へ突つ込んで、叔母さんからかつらの古いのを貰つて、附け髷を拵へて頭の上へ載つけて行きましたよ、——さすがに曲者も僞物にせものの髷とは氣が付かなかつた」
眞物ほんものの高力左近太夫高長は、翌年二月、江戸上屋敷にひそんでゐるところを大目付に發見され、豫々かね/″\所領の仕置宜しからずとあつて、三萬七千石を沒收、身柄は仙臺藩に預けられ
「私が側に居て、斯んな事にならうとは思ひませんでした。お寺へも氣の毒ですし、眞物ほんものの小判が出なければ、せめて三つの一つでも私がお寺へ寄進をしようかと思つて居ります」
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
眞物ほんものの御朱印はこの通り勿體ないがこの彦太郎の肌身に着けて守護してある——
その跡に取り殘されて、おろ/\して居るのは眞物ほんものの聟、仲屋の錦太郎でした。二十五六の華奢きやしやな男、青い顏をして、激動に顫へて居りますが、性根はなか/\の確りものらしくもあります。
武士なら、金打きんちやうといふところだ。八五郎が木枯の傳次か傳次でねえか、確かな證據を揃へてお眼にかけよう。三日の間に眞物ほんものの木枯の傳次を縛れなかつたら、十手捕繩を返上してこの平次がまげ
疑ひもなく元のまゝの眞物ほんもので、贋物と摺り替へた形跡は少しもなく、あんなに骨を折つて盜つた癖に、鐚錢びたせん一枚身に着けないのですから、この泥棒の目的ばかりは全く見當も付かないのでした。
隱さう、あの聖天しやうてん樣、男女兩體の二つの夜光石のうち、何千兩といふ値打のある、眞物ほんものの夜光石は、男體の額のだけで、女體の額にハメ込んである、銀杏ぎんなんほどの小さいのは、あれは僞物でございますよ
眞物ほんものの御用聞に逢つたら? 曲者はどうなるだらう」
「親分、到頭眞物ほんものですね」