直径さしわたし)” の例文
旧字:直徑
私の知っている母は、常に大きな眼鏡めがねをかけて裁縫しごとをしていた。その眼鏡は鉄縁の古風なもので、たまの大きさが直径さしわたし二寸以上もあったように思われる。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十八金、直径さしわたし九分、重量めかた五匁、代価凡そ三十円——これが人々のしまひに一致した評価で、別に添へてある表彰文の中には、よく教育の施設をなしたと書いてあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これよりわたしの使いまする独楽は、その四国太夫の製法にかかわる、直径さしわたし一尺のはらみ独楽、用うる紐は一丈と八尺、麻に絹に女の髪を、い交ぜにしたものにござります。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
直径さしわたし尺五寸もある太い丸太の、頭を円くして二本植ゑた、それが校門で、右と左、手頃の棒の先を尖らして、無造作に鋼線はりがねつないだ木柵は、まばらで、不規則で、歪んで
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
買い入れを躊躇ちゅうちょしているのですが、材木はすこぶる立派で、直径さしわたし六尺から七尺位のものがある。
なるほど、直径さしわたし二尺ぐらいの低い窓が、壁についている。格子形に組んである竹も細い。小泉は、小刀を抜くと、一本一本音を立てぬように、切り始めた。山田も手を貸した。
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
直径さしわたしにして、ほんの五、六間ぐらいのものだったでしょうか? 笑いながら道をふさいでいる四、五人連れの大学生の間をり抜けて、手をかれた子供を突き飛ばしそうにして
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
全面の直径さしわたしは凡そ二尺余りも有ろうか、切めて是が七八分通りも動き、隙間が一尺五寸ほどにでもなれば潜り込む事は出来るけれど、僅か十分の一即ち二寸ぐらい開いた丈では
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
本口周もとくちまはり三尺九寸、本口直径さしわたし一尺四寸、末口すゑくち周り一尺五寸、末口直径さしわたし七寸、といふ事だ。
両国橋の本所寄りの方にも、これは直径さしわたし五寸もあろうと思われる大銭形が一つ。もう疑いも何にもないような気になって、ひた走りに広小路へ、——ここへ来ると、さすがに躊躇ためらいます。
「ようがす、その香盒とやらの形はどんなものだと聞くと、直径さしわたし三寸ぐらいの丸いちっぽけなもので、黄金きんで出来ていて、曼陀羅とかお題目とか、むずかしいものが彫ってあるんだそうだ」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
直径さしわたし七尺有余もある栃の木といえば、その高さもおおよそ察せられましょう。枝が五間十間と張りひろがって、山の半腹をおおわんばかり、仰いでは空も見えないほどでありましょう。
人々の視線は燦然さんぜんとした黄金の光輝ひかりに集つたのである。一人の町会議員は其金質を、一人は其重量めかた直径さしわたしとを、一人は其見積りの代価を、いづれも心に商量したり感嘆したりして眺めた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
直径さしわたし十間はございましょう」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
直径さしわたし六、七尺のものを長さ六尺ずつ二つに切り、それを縦に二つに割ったのです。