白峰しらね)” の例文
しかし直接に文通したのは、少しく金の入用があったので、白峰しらねの紀行文を、花袋を通じて『太陽』に寄せたときが初めてであった。
眼ざといM君がさす方に、深い雪の山、甲斐かい白峰しらね——北岳だそうだ。この国しらす峻嶺は、厳として群山むれやまの後にそびえているのだ。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
目指す白峰しらね山脈の大尾根は、二、三の赭い崖を行手に見せて、手が届く程の距離ではあるが、未だ二時間は懸るものと見なければなるまい。
小島烏水こじまうすい氏は甲斐かい白峰しらねを世に紹介した率先者である。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
それから日本全国中、富士山に次いでの標高を有する、私共のいわゆる日本南アルプスの第一高峰白峰しらね(三一九二米突)がそれである。
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
二ノ池の小屋の主人に山名を尋ねて見たが知らない。さいわいに泊り合せた駒草採りの男が居て、「あれは甲州の山で白峰しらねというのだ」と教えてれた。
北岳と朝日岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
又赤石山系即ち通称日本南アルプスの白峰しらね山脈の山である農鳥のうとり岳は其名の如く春の農作に取り懸る頃、頂上直下に鳥形の残雪が現れるので名高い。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
一望ぼうとして、北氷洋がこおったように雲は硬く結んでいる、東方甲斐の白峰しらねを先頭とせる赤石山系のみは、水の中に潜んでもいるように藍をした、我が一脈の日本アルプスは
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
赤石山系の二大山脈即ち白峰しらね山脈と赤石山脈とは、その北端に位する鳳凰山塊と共に、日本南アルプスと呼ばれている。
大井川奥山の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
前年雨のために失敗した白峰しらね山登りを、再びするために、今年(四十一年)は七月下旬高頭式たかとうしょく、田村政七両氏と共に鰍沢かじかざわへ入った、宿屋は粉屋であった、夕飯の終るころ、向い合った室から
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
地蔵岳の上には白峰しらね山脈の帝王北岳、続いてあいノ岳、農鳥のうとり山と、或は尖った或は穏かな雪の金字塔が高く天半に押し立てられている。広河内ひろこうち、白河内。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
葡萄えび色にあかッちゃけて、もう心もち西へ廻った日光が、斜にその上を漂っている、西の方遥かに白峰しらね、赤石、駒ヶ岳、さては飛騨山脈が、プラチナの大鎖を空間に繋いだように、蜿蜒えんえんとして
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
南アルプスの黒部川ともいう可き大井川は、西を赤石、東を白峰しらねという一万尺以上の高峰を有する二大山脈に限られて、万山の奥を思いの外おだやかに流れています。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
南アルプスの白峰しらね、北岳、あいたけにしても、北アルプスの槍ヶ岳、穂高岳にしても、三千二百米の高さには達していない。七合五勺で、日本アルプスの最高点以上の空に浮かび上っているのだ。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
(四)沢の名を冠するもの(赤石岳、荒川岳、ひじり岳、上河内かみこうち岳等其例頗る多い)、(五)雪にちなめるもの(白山、白峰しらね農鳥のうとり岳、じい岳、蝶ヶ岳、地紙じがみ山、三之字山等)
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
落日より億万の光線を吸収して、その一本一本に磨きをかけるのは、山の雪である、アルプスばかりではない『甲斐国志』にも、白峰しらねの夕照は、八景の一なりとある、山の雪は烈しい圧迫のために
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
右からは白峰しらね山脈が、大菩薩連嶺の南端に在る滝子山の横腹から、恐ろしく刃渡りの長い大薙刀を上向きに切先鋭く突き出して、あたりの山を近付けまいと威嚇している。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
芦安あしやすの名取直江という人が明治四年に開いた白峰しらね北岳は、登山者がないので間もなく荒廃したというが、明治十九年に敬神講の先達原丈吉という人の開いた赤石、奥西河内おくにしごうち
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
そばに居た駒草こまくさ採りの男が甲州の山で白峰しらねというのだと教えてくれました。賽の河原を過ぎて三の池まで来ますと、火口壁の上では幾組もの先達が池に向って盛に九字を切っていました。
木曾御岳の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
旭の光は早川の西岸に眉を圧して聳え立つ白峰しらね山脈の中腹を照らしている。しかし薬研やげんの底のような低い谷間では、河上からおろす風が湯のぬくもりのさめない肌に、ひやりと感ずる程涼しい。
十一月中旬、此山から初雪を戴いた白峰しらね赤石の連嶺を遠望した時には、とても黙ってじっとして居られなかった。路は短い笹原の中を緩く登っている。この頂上から飛竜へは二時間あれば行かれる。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
しかるに南アルプスは起伏少く、大まかでゆったりした観があり、峰頭の鋭く尖っていることは極めて稀である。試に北アルプスの槍穂高の一群と南アルプスの白峰しらね三山附近とを取って比較して見る。
南北アルプス通説 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)