留吉とめきち)” の例文
この村には山田留吉とめきちという生まれながらの白痴があるのだそうです。留吉は今年十五歳ですけれども、その知恵は三歳の小児にも劣っております。
白痴の知恵 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
と、つい数日前に、この植甚うえじんの家へ住込みになった、わたりの留吉とめきちは、池の水を見ながら、親方の植甚へ云った。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「君の帽子だろう」あとから食堂を出てきた車屋さんが、すっぽりと留吉とめきちの頭へ、帽子ママはめてしまいました。
都の眼 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
前の日留吉とめきちに借りた妙ないでたちの上に、白いエプロンをぶら下げ、白いキッチン・キャップをかぶっていた。どうやら留吉の紹介でこのコック部屋へ這入はいりこんだものらしい。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御召おめしにつれて髭顔ひげがお二つランプの光にあらわれ、天幕の入口に蹲踞そんこした。若い方は、先刻さっき山鳥五羽うって来た白手しらで留吉とめきち、漢字で立派に名がかけて、話も自由自在なハイカラである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
回向院前の指物師清兵衛方では急ぎの仕事があって、養子の恒太郎が久次きゅうじ留吉とめきちなどという三四名の職人を相手に、夜延よなべ仕事をしておる処へ、あわてゝ兼松が駈込んでまいりまして
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
台を隔てて主人の留吉とめきちと女房のおいせがいる。おいせは燗番かんばんであり、留吉はさかなを作る。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
留吉とめきちと申します。この家の奉公人で」
留吉とめきちは稲田のあぜに腰かけて遠い山を見ていました。いつも留吉の考えることでありましたが、あの山の向うに、留吉が長いこと行って見たいと思っている都があるのでした。
都の眼 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
真先まっさきかの留吉とめきち、中にお花さんが甲斐〻〻かいかいしく子をって、最後に彼ヤイコクがアツシを藤蔓ふじづるんだくつ穿き、マキリをいて、大股おおまたに歩いて来る。余は木蔭からまたたきもせず其行進マアチを眺めた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今田時雄いまだときお、ああこれだ、これが昔の友達、時公ときこうの家だ。白い石の柱が左右に立って、鉄の飾格子かざりごうしドアのような門がそれでした。まるで郡役所のような門だなと、留吉とめきちは考えました。
都の眼 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
これはフィリップがお手本になったのですが、「都の」の留吉とめきちにしても「たどんの與太よたさん」の與太郎にしても、みんな私自身の少年の姿です。「日輪草ひまわりそう」のくまさんも私の姿に違いありません。
はしがき (新字新仮名) / 竹久夢二(著)