片仮名かたかな)” の例文
旧字:片假名
死骸しがいのかたわらに出刃庖丁でばぼうちょうが捨ててあった。の所に片仮名かたかなのテの字の焼き印のある、これを調べると、出刃打ちのつかっていた道具だ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片仮名かたかなは平仮名に比べると、「ク」の字も「テ」の字も落ち着いてゐる。或は片仮名は平仮名よりも進歩した音標文字なのかも知れない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
よく講演なんていうと西洋人の名前なんか出て来てききにくい人もあるようですが、私の今日の御話には片仮名かたかなの名前なんか一つもでてきません。
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
附馬牛つくもうしの谷へ越ゆれば早池峯はやちねの山は淡くかすみ山の形は菅笠すげがさのごとくまた片仮名かたかなのへの字に似たり。この谷は稲熟することさらに遅く満目一色に青し。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ハイカラの久松に凴着くにはやはり片仮名かたかなのインフルエンザの方が似合うらしいと、私の父は笑っていた。そうして、その父も明治三十五年にやはりインフルエンザで死んだ。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
家庭教師は、目はその方を見つづけたまま、手真似をして二人を黙らせたが、帯の間から金色をした小型のシャープ鉛筆を取出し、そこにあったメニュの裏へ、何か妙な片仮名かたかなを書き始めた。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その札は齒と本字を書き、イシヤと片仮名かたかなを書いてあつたから、珍らしいだけでも見違へではない。(以上家を借りてから)
鵠沼雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
のこぎりいて、をんな立像りつざうだけいてる、と鳥居とりゐは、片仮名かたかなのヰのつて、ほこらまへに、もり出口でぐちから、田甫たんぼなはてやまのぞいてつであらう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
細字さいじに書き終った甲野さんは、そのあと片仮名かたかなでレオパルジと入れた。日記を右に片寄せる。置き易えた書物を再びもとの座に直して、静かに読み始める。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我々の片仮名かたかなで描き出そうとするから失敗するのだが、もともと雀の子音はいたって数少なく、ことによったら一つの音素が、出しようによってちがって聴えるのかとも思う。