燈火あかし)” の例文
新字:灯火
「——燈火あかしの影を見うけて立ち寄ったものでおざる。苦しゅうなくば宿をおかしくださるまいか。決して、怪しい者などではありません」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家来けらいランプをともして持ちきたり、置いて帰りく。)ええ、またこの燈火あかしが照すと、己の部屋のがらくた道具が見える。
「そうだ。おら去年烏瓜の燈火あかしこさえた。そして縁側えんがわつるして置いたら風吹いて落ちた。」と耕一が言いました。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
炉の火はだんだんに消えて、暗い家のなかにかすかに揺れているのは仏前の燈火あかしばかりである。
くろん坊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と跡いいかけまするとき、ギイ/\と櫓壺のきしる音がして、燈火あかしがちらり/\とさす舟が漕ぎまいります。伊之吉は俄に花里を制し、また元の如く苫をかぶらせてしまいました。
いかにおまへのはね黄金こがねの燦きにひらかれるときも、そこには展くによしなく、匂ふにすべもない、あだな影ふかいうれひのみ。このとき、へよ、蜜蜂すがるよ、——もし神あらば燈火あかしをかゝげよ、と。
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
内の燈火あかしは常よりあざやかあるじが晩酌の喫台ちやぶだいを照し、火鉢ひばちけたるなべの物は沸々ふつふつくんじて、はや一銚子ひとちようしへたるに、いまだ狂女の音容おとづれはあらず。お峯はなかば危みつつも幾分の安堵あんどの思をもてあそび喜ぶ風情ふぜいにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
母は、仏壇や神棚へお燈火あかしをあげてお祈りした。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
それに燈火あかしをいれて平気で漕いでまいりました。
「暗うてはどうもならぬ。早う燈火あかしを持て」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いま燈火あかしは、弱弱しげに、細まる。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
「ともかくも燈火あかしを早う。灯をともせ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
燈火あかしをつけられい。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)