灰塵かいじん)” の例文
すると不幸なことに、会社は、跡片もなく灰塵かいじんに帰していた。そしてその跡には、道々に見てきたような立退先の立て札一つ建っていなかった。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もしや何か目じるしの札でもと存じ灰塵かいじん瓦礫がれきの中を掘るようにして探ねましたが、思えば剣戟けんげき猛火のあいだ、そのようなものの残っていよう道理もございません。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
そして遂には朱雀門や大極殿、大学寮、民部省等の重要な建築を一夜の中にことごと灰塵かいじんとしてしまった。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
下町方面はほとんど全部灰塵かいじんに帰して、今やその跡に新たなる東京が建設されつつあるので、その光景も気分も情調も、全く更生的の変化を示しているが、わが神楽坂通りをはじめ牛込の全区は
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
身を灰塵かいじん中にころばして白くし、越後獅子えちごじし様に逆立ちこれを久しゅうせるを鳶が望んで灰塚の頂に生肉二塊ありと誤認し、二、三羽下り撃つところを取って羽生えたまま煮え沸くなべに押し込むを
このときおこつた大氣たいき波動はどう世界せかい三週半さんしゆうはんするまで追跡ついせきられ、海水かいすい動搖どうよう津浪つなみとして全地球上ぜんちきゆうじようほとんどいたところ觀測かんそくせられた。また大氣中たいきちゆう混入こんにゆうした灰塵かいじん太陽たいよう赤色せきしよくせること數週間すうしゆうかんおよんだ。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
もしや何か目じるしの札でもと存じ灰塵かいじん瓦礫がれきの中を掘るやうにして探ねましたが、思へば剣戟けんげき猛火のあひだ、そのやうなものの残つてゐよう道理もございません。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)